Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    ねずちゅー

    @nezutyuuusan

    @nezutyuuusan

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 80

    ねずちゅー

    ☆quiet follow

    蜜柑さんの転ちゃんピアノ演奏しています
    自転♂視点
    自転♂のみ、双子はおやすみ

    蜜柑さんの転ちゃんと自転♂が絡みに行く話し 呪文学が終わり休憩時間が空いたので、双子の姉シャルロットに会おうと教室を出る。

     教室を出た途端、綺麗な音が小さく聴こえた。
     俺は耳を傾けた。
     誰かがピアノを演奏しているみたいだ。
     
     芯の通った見事な演奏だな……。
     これは相当な腕前の持ち主と見える。
     俺もホグワーツにくる前、魔法サーカスでの仕事でよく演奏したものだ。
     まぁ、来賓客をもてなすため命令で仕方なくだが。
     
     音楽は奥が深い。
     演奏者がどういう気持ちで何を表現しようとしているのか……。
     それらが音となって、まるで魔法のように周囲にイメージを伝えてくれるのだ。

     俺は誘われるようにフラフラと音が鳴る場所まで行く。
     そこには1人の女性が座っていた。

     俺は彼女を視界に入れながら壁にもたれかかる。

     彼女が静かに鍵盤に指を乗せる。
     ピアノの音が鳴り響く。
     訓練された10本の指たちは、鍵盤の端から端までを高速で踊るように駆けて行く。
     どこにも無理がないその自然な動き。
     一つ一つが際立ち、小さな音であってもあたりを響かせる。

     音と音が絡まり合い、音の中に体ごと沈むような懐かしい感覚。
     脳内に波紋が広がるように色と形を届けてくれる。
     
     俺は目を閉じ、耳を傾けてみる。
     音楽と一部になるように、流れるまま身を任せる。
     そうしたら、俺の目の前には自然豊かな草原が見えるようになった。
     沢山の木々や草花がある中、俺は一輪の花を見つける。
     その花は何度も何度も伝えてくる。
     
     [私を見て]


     
     パチパチ。
     俺は彼女が一通り演奏し終えると同時に拍手を送る。

     彼女がこちらの存在にようやく気付いた。
     綺麗な姿勢を維持しながら、彼女はスッと席から立ち上がる。

    「見事な演奏、ありがとう。聴き入ってしまったよ。貴方のお名前を伺っても?私はシャルドネ・デ・フォールという。よろしくねお嬢さん」

     俺はそう言って彼女の片頬にキスをした。
     とは言っても、音だけだが。

    「私はラウラ・スコットといいます」

     彼女はそう言いながら、私と同様片頬にエアーキスをくれた。

     ふーん。
     恥じることも動揺することもない。
     それと貴族的な付き合い方を知っているのか。
     ……面白い女だな。
     興味深い。

    「いつもここで演奏を?」

    「ええ。頭を整理するときとかにピアノを演奏してて……」
     
    「……そうだね……さっきの音色には曲調とは違ったモノを感じられたから」

    「えっ?……驚いたわ。まさかこの学校で音楽に詳しい人がいるなんて」

     彼女は目をパチパチと数回瞬きする。

    「昔、音楽をかじったことがあるんでね。……何かお悩みごとでも?」

     彼女は一瞬悩む素振りを見せたが、やがて静かにポツリポツリと話し出した。

    「……友達の話なんだけど、仲の良い男の子から代わりに渡してほしいってお手紙を貰ったの。自分じゃなく他の女性宛のをよ」

     俺は首を縦に振り、優しく続きを催促した。
     
    「その受け取ったお友達は、その男の子と1番女の子の中で仲良しだと思っていたの。受け取る前までは。だから……この気持ちのモヤモヤはいったい何か……分からなくて、ずーっと頭から離れなくて……」

    「友達は結局手紙を渡したのか?」

    「……いいえ、まだ渡してないの……貴方ならこの時手紙を渡す?渡さない?」

     ほぅ。
     複雑な感情……か。
     考えたことないな。

    「うーん。私なら……中身を確認して……恋文だとわかったなら燃やすね。燃やしてから、依頼者にこう告げるよ……顔も見たくない、二度と話しかけないで……と言われたって。……ふふっ、冗談だよ」

     冗談だと聞いた彼女はホッとし、ふふっと貰い笑いをした。
     
    「……でも、そういう選択もあるのね……」

    「ははっ、参考にしないほうがいいよ」

     俺みたいに捻くれないほうがいいに決まっている。

    「ピアノを演奏する時のように、その時を味わえばいい……私はそう思うよ。友達に言ってあげて。君のやりたいようにすればいい。手紙を受け取った時に感じた感情は君にとって宝なのだから」
     
    「ふふっ、そうね。無理に考えすぎたのね」

     彼女は悩みが軽く吹っ切れたように、爽やかな微笑みを見せる。

    「相談に乗ってくれてありがとう。今度、私とデュエット(二重奏)してみない?私はいつでもここにいるわ。演奏がしたくなったらまたここに来て」

     彼女が俺に握手を求めてきた。
     俺はその手を握る。
     
    「ああ。その時はお邪魔させてもらうよ」
     
     
     
     ……俺らしくない。
     何故他人の悩みを聞くようなことをしたのだろう。
     彼女の演奏がそれほど素晴らしかったのだろうか?
     彼女の何が俺をそうさせたのだろうか?
     それとも……
     
    (……これもまた、俺の大事な感情という宝なんだろうか?)


     こういう日もたまには悪くないな……。
     俺は鼻で笑った。
     
     
     
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💖
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works