ウェイドくんに制作依頼「さーて、彼は今どこにいるかな……」
俺は今とある生徒を探している。
彼は魔法薬学が得意であり、学校の教師に無断で闇市を定期的に開催している猛者でもある。
俺はそんな彼の商品をとても気に入っている。
なんせ、ギャレスよりも融通がきくからな。
「……おっと、ここにいたか」
ようやく見つけた彼の隠れ闇市会場はここ、南棟時計台エリアの階段で上がった先の部屋だった。
ここだと杖十字会の生徒らが集まる場所が下にあるから、生徒らがこぞって買いに来るだろう。
それにより新規の客にも出会える。
彼もよく考えるな。
だが、彼の天敵であるシャープ先生がいつ来るか予測できないのが難点だが……。
まぁ、彼なりに何か勝算があるのだろう。
俺は扉をコンコンとノックする。
「ウェイド、入るぞー」
「はいはーい!」
俺は扉をガチャリと開け、部屋の中に入る。
ウェイドは床に持参しただろう絨毯の上に座っていた。
自作した商品も絨毯の上にズラズラと並んでいる。
「ほら、約束の品だ」
俺は袋を彼に手渡しする。
「うわー!真っ白で綺麗な鱗!」
彼は鱗を1つ袋から取り出し上に掲げる。
鱗が光を浴びてキラキラと反射していた。
「えへへっ、ありがとう」
彼は嬉しそうにニコニコしながら鱗を戻す。
その後、彼はゴソゴソと空袋を取り出した。
その中に薬瓶を入れていく。
「マキシマ薬にエデュラス薬、雷調合薬に強化薬……縮み薬とハナハッカ・エキス、真実薬もあげちゃう!!」
ささ!どうぞ!
彼は元気な声で微笑みながら言った。
俺は彼から薬瓶が入った袋を受け取る。
「……こんなに貰ってもいいのかい?」
中には高価な薬までが入っていた。
少々サービスが良すぎではないか?
「とんでもないよ!これでもまだ足りないぐらいさ!」
彼はワタワタと少し興奮気味に言った。
「これにそんな価値が?」
俺は自分の鱗が入った袋を見つめる。
「ドラゴンは元々個体数が多くないから、その分希少価値が高いんだよ」
あ!
彼は何かにふと気付いたような声を出す。
彼は何を思ったのかオドオドと少し心配そうな顔をしていた。
「今更だけど、鱗貰っても大丈夫だった?わざわざ取ってはがしている……とかじゃないよね?」
あー。
それを心配していたのか。
「かまわない。鱗なんてポロポロ取れる。猫の抜け毛のようにな」
「ふぅ……、それならよかったー」
ウェイドはホッとしたように胸を撫で下ろした。
「ところで、鱗は何に使えるんだ?」
「え?!いっぱいあるよ!ドラゴンだもん!」
「ふーん……」
なるほど……。
これにそんな価値が……。
「まぁこの話はさておき。ウェイド、貴方に依頼したいことがある」
「ん?何?」
「制作依頼だよ。脱狼薬を作ってほしい」
「いいよ!お安いご用さ!」
おや?
脱狼薬とは狼にならないために人狼が飲む薬だ。
誰が人狼なのか聞くだろうと思っていたが……。
検索はしないのか?
興味がないのか……それとも誰が使用するか大方分かっているのか……。
まぁ、私からバラすものじゃないから助かる。
「いくら必要だ?」
すると彼はキョトンと不思議そうな顔で首を傾げた。
俺、何か変なこと言ったか?
「……え?いいって!いつものお礼だよ!」
「そうか、ありがとう。貴方からのお礼、素直に受け取ろう」
こういう好意は無下にしてはいけない。
「えへへっ。これからもご贔屓に」
じゃあな。
俺は彼に別れを告げて部屋から退出した。
ギャレスに鱗を渡したら何をしでかすか分かったもんじゃないが、ウェイドならば大丈夫だろう。
俺はそれだけ彼の腕前を信用しているし、有意義に使うと信頼している。
ドラゴンの鱗以外にも血も材料になるのだったよな……。
彼になら俺の血をあげてもいいな。
これで彼の経験が得られるならば。