ドアスコープ越しに見る🧀ジーーーーッ
掠れた耳鳴りのような音がドアベルだったことに気づいたのは、何回か鳴らされてからだった。家賃と反比例した築年数のこの部屋は、どこもかしこも不具合だらけだ。私は片耳につけていたイヤホンを外し、椅子から立ち上がる。まだ鳴り続けるドアベルを聞きながら、とりあえず作業内容に保存をかけてから、日光ではなくブルーライトを浴びまくった目を擦り、運動不足の脚を引きずって玄関に向かう。
ココ数日仕事が立て込んでいたのと面倒なのとが相まって、食事は出前に頼りきりだ。今日も確かピザを頼んだはずだ。
「はいはーい」
私は鍵を開けようとした手を止める。何かと物騒な世の中だ。油断したらドアを開けた瞬間グサリ、なんてされかねない。一応確認しておこう、とドアスコープを覗いて息を呑んだ。
1373