土手南瓜は菓子の夢を見るか「……」
「……」
超魔生物は目の前の生き物に困惑していた。
頭部は南瓜である。
黒いケープのついたマントで体を覆っている。
「オカシ、クレナキャ、イタズラスルゾ(裏声)」
「……」
「オカシ、」
「もう三回目だ聞いている」
問題は南瓜の両脇から飛び出しているツノと薄板だ。
……仮装のつもりなのだろうか。
……仮装なんだよな。
おそらく南瓜の中身であろう副官はじっと黙って立っている。
返答を待っているのだろうか。
「今オレは菓子など持ち合わせておらん」
「ジャ、イタズラ、シテイイデスカ……スルゾ」
「待て」
ケープの裾から両手をわきわきさせながら近寄ってくる南瓜を制止しながら必死で頭を働かせる。
何だ。何だこれ。何が起きてるんだ。
ていうか何してるんだアルビナス。
「アルビナスだよな?」
ぴた。
南瓜の動きが止まった。
「アルビナスナンテ、シリマセン……シラナイゾ」
「いやアルビナスだろお前」
「悪戯は構わんがお前は菓子を持っているのか」
「……は?」
おい素が出てるぞ素が。
「お前もオレに菓子を差し出さねば悪戯されるぞ」
「ええっ……」
明らかに狼狽しはじめる南瓜。
少し楽しくなってきた。
「デモ、ハドラーサマ、カソウシテナイ」
「この姿はもう仮装みたいなものだろう」
えっなにそれズルくないですか、と小声が聞こえる。
聞こえてるぞ。
「さあどうする?」
ずい、と前に出ると南瓜は下がる。
背が壁に行き当たるとひえ、と小さな悲鳴が聞こえた。
南瓜のマスクを取り上げ、放り投げるとかがみ込んでそっと頬に唇をあてた。
「これでおあいこだろう」
ニヤリと笑って立ち去る。
床に転がる南瓜が笑顔を向けていた。