お揃いのマグカップ カンッという乾いた音を立ててエナジードリンクの空き缶が転がった。その隣に置いてあったブラックコーヒーのペットボトルがドミノ倒しのように次々倒れ、静かなオフィスに大合唱を響かせた。
「チッ……」
周りの視線を少し気にしながら溜め込み過ぎていたそれらをゴミ箱へと捨てた。定時まであと二時間。自ら取りに行った仕事がその時間内に終わるという奇跡が起きるはずも無かった。
終電に乗り込み数分間揺られる。気付けばこんな生活も三年目に突入した。「どんなにキツくても好きな仕事だから続けられる」これが一般的な考えなのだろうが俺は違う。今やっている仕事が別に好きな訳ではない。ただ、自分の存在を正しく評価され認めてもらいたいのだ。去年の春、同期の中で自分だけが主任へ昇格した。悔しそうな同僚の面を見るのが楽しくて仕方なかった。その快感に変えられるものは今のところ他に無い。
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