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    botabota_mocchi

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    5.1〜5.3あたりのラハ光♀
    アリゼーちゃんは知っている

    ##ラハ光

    いつか彼方へ至るまで「私、知ってるんだから」
    頬を膨らませたアリゼーに冒険者ははて、と首を傾げた。思い当たる範囲にアリゼーに叱られるような無茶の記憶がなかったのだ。そもそも、暁の帰還の要であるソウル・サイフォンの製作に携われるような知識は持ち合わせていないし、アシエン・エリディブスの暗躍も様子見状態とくれば、一介の冒険者のできる『無茶』さえたかが知れている。首が傾きすぎて落っこちそうな冒険者に、アリゼーは眉を寄せた。
    「あなた、ふたりっきりの時だけ『水晶公』を名前で呼んでいるわよね」
    これはまた明後日の方向に話題が向かったな、と目を丸くする。特に意識していなかったが、確かに海の底での再会を除けば、二人の時くらいしか呼んでいない。
    「それがどうしたんですか」
    「水晶公とあなたは元から知り合いだったから名前を知ってるわけでしょ。それで、あの人が改めて私たちに名乗り直す様子もないわよね」
    そう言われれば、そうだ。そも、冒険者が名を呼んだ時だって、「あなたにそう呼ばれると、あの日に戻りそうになる」だなんてはにかんで、言うなれば『水晶公』らしくない姿を見せていたので――彼の築き上げてきた『水晶公』というものの妨げになるならよくないな、と、人前で呼び方を改めるようなことをしていなかったのだと、それだけのことである。
    本当はこんなこと確認したくない、とアリゼーの顔には書いてあった。意図を汲んで返事をしてあげられればいいのだが、これっぽっちも予測がつかない。
    「す、水晶公とは……特別な関係だったりするのかしら!?」
    「とくべつな」
    「恋人とか……エターナルバンドとか……!」
    「エターナルバンドの儀式って第一世界にもあるんです?」
    「そこじゃないわよ!」
    怒られてしまった。定義の確認をしたかっただけなのに――いや、まあ、定義を確認したところで、“ない”事実が“ある”に変わることはないのだが。
    「コソコソ親しげに呼び合うなんていかにも……いかにも何かありげじゃない! どうなのよ!」
    「どうもなにも。そのような事実はありません。友人……、旧友? 仲間? そんなところです。わざわざ混乱を招くようなことをする必要もないな、と、人前では水晶公と呼んでいるだけで」
    「……そう。あなたにとって水晶公は『水晶公』であるより先に古い友人、ってだけなのね」
    それならいいわ!と至極スッキリした顔でアリゼーは踵を返した。本当にこれを確認したかっただけらしい。不思議なことを気にするものだと――たったそれだけ。それだけなのに。
    「べつに、二人の時だって、わざわざ名前を呼ばなくても……」
    よかった、のだろう。要求された覚えもない。こうして誤解を招くくらいで、むしろ冒険者としては手間が増えるだけのことのはずで。それでも彼の名を呼ぶのは――あんまり嬉しそうに笑うからだ。私に名前を呼ばれる、それだけのことを、宝石のように受け取るひとだから。
    心臓をくすぐったむず痒さに、名前はまだない。
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