冬の日 ブルースの帰宅がいつもより早い時間だったので、雪の結晶が街を覆う姿を見たのは起床時になった。
午後のお茶の時間を回ってから(それでもいつもよりかなり早い)ダイニングと言うには広すぎる部屋に降りると、湯気の立つカップを持ったブルースが窓の外を眺めていた。
「おはよう。よく眠れたかい?」
と、自分と同じ黒いシャツにスラックス姿でリラックスしていたブルース。基本的に好みが似ている…と言うか同じなので、時々こうしてお揃いの服装になっている。それを見たドリーに「黒猫の兄弟みたいですわ」と言われたこともある程、もはや恒例になっていた。
「積もったのか?」
「うん。まだ降っているよ。白いゴッサムは珍しいね」
自分も窓に近づいて白い綿帽子を被った街並みを眺めると、カップに注がれたお茶の香りが鼻をくすぐった。
「今入れてもらったばかりだから温かいよ。飲む?」
「ああ」
ブルースは自分が飲んでいたカップをそのまま手渡すと、受け取ったブルースはそれを両手で暖を取るように包み込み、温かい液体に口をつけた。
「昨日は寒かったろう」
「雪だと人の出足も鈍くなるし、早めに切り上げた」
「今日は悪さをする奴も大人しくしてくれてると有り難いな」
ブルースはそう言いながら、暖炉の前にあるソファに座った。メガネを掛け、PCで調べ物をしていたようだ。そんな後ろ姿を眺めると、ブルースは胸の中がほっと暖かくなる感じがする。もうすっかりこの家の第二の主の風情だ。本人は居候だよ、とそのつもりはないようだけれども。
ブルースは傍に行き、隣に腰を下ろす。革張りのソファの上に足を載せて、体育座りのような姿勢でそのままカップのお茶を飲み始める。
「今日は寒い」
「温まるといいよ」
ブルースは横にやって来た大きな猫の腰に手を回し、居心地がいいように位置の調整をする。猫が体重を載せてきた。体温で暖を取るのには丁度いい日だった。