明日、ぼくはきっと死ぬだろう。
四月四日。四十四歳になる、その日に。
四十四
流し込んだアルコールの辛さに、顔を顰めた。今まで酒なんてろくに飲んだこともなかった。せいぜいビールを一杯やって気持ちよくなっている程度なものだ。焼酎の喉を焼く痛みは圧倒的に不愉快で、けれどアルコールの作用なのかその痛みもマヒしはじめていた。目の前が霞んでいる。ぼくは眼鏡を外して、瞼をごしごしと擦った。
「ああ、駄目ですよそんなに擦っちゃ。ねえ、神馬さん」
カウンターの向こうから伸びてきた手が、ぼくの手首を掴んだ。ぼくは目を細めて、ぼやけた視界を睨む。
カウンター越しに立ったぼやけた人影は、かすかに笑って手を離した。
「どうしたんですか、ずいぶん不機嫌そうですね」
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