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    センリ°F

    メディア欄整理のためのプラス用格納庫。ぷらいべったー以外のサブのシリーズものを置いています。

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    センリ°F

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    現パロ🃏💋🐯宅の居候猫こと🌸
    🐊が出ます。🐯はおやすみ。

    -🃏相手プラスだけど逆ハー(なのか?)
    -🐯は🃏💋宅の同居人
    -🃏がある日🌸を拾ってきた
    -恋人というよりもほぼペット扱い
    -ゆるくシリーズ予定

    ##同居人シリーズ

    にわか雨の話ドンキホーテ・ロシナンテは珍しく転ばずに走っていた。土砂降りの雨の中、必死に。バシャバシャと水を跳ね上げてはいるが、手を繋いでいる猫にはなるべく飛沫がかからないようにしたい。
    「あ、ロシナンテ、クレープ屋さん」
    「この状況で!?」
    雨に濡れても呑気な声だ。傘のない二人はすっかりずぶ濡れであったが、猫に至ってはシャツワンピースの色が変わるほど濡れ鼠になっている。さっき対向車に思い切り泥水を引っ掛けられたからだ。
    藁にもすがる思いで立ち寄ったファミマは傘が全て売り切れていた。家まで電車で4駅。こんなにびしょ濡れではバスも電車も無理だろう。それに──
    「タピオカ屋さん」
    「ダメ!!ホラ、パーカーから出るなよ!」
    猫のシャツワンピースはスッケスケになっていて、柔らかそうな二の腕とか胸元とか、キャミソールごしの下着とかがもう全部丸見えなのだ。なんでこういう日に限ってちゃんとしたのを着けてるんだ?いや、着けててくれて本当によかったが、とロシナンテは泣きそうになる。
    ロシナンテのパーカーを頭から被せられている猫は、クレープもタピオカもスルーさせられたことに不服そうだ。こんな格好で公共交通機関は使えないので、小さな手を引いて目的地のビルまで走る。
    珍しくスマホを水没させなかったロシナンテは、10分前に兄へ電話をかけていた。社用車で空いてるのがあれば貸してくれないかと聞くと、兄はオフィスの地下駐車場で待っていろと言ったのだ。
    びしょ濡れのまま、オフィスビルの警備員の前を通って、エレベーターへ。B3を押すと猫がくしゃみをした。
    地下駐は雨の日特有のじめっとした空気が漂っている。打ちっぱなしのコンクリートをぼうと照らす、白いハロゲン灯がいやに明るい。
    「大丈夫か?寒いよなあ、…っへっくしょおおん!!」
    甲斐甲斐しく猫の身体をパーカーでぐるぐる巻きにしてやっているが、自らもくしゃみをしているロシナンテは、ポケットの中で震え出したスマホをほとんど落っことしそうになった。水の滴る髪をかきあげて液晶画面を耳に当てるが、よく聞こえない。おそらく、かけてきたのはドフラミンゴだ。
    猫は前髪から水を垂らしながら、その姿をぼうっと見つめていた。ロシナンテはその視線に気づき、頭を撫でてやる。
    「…んー全然聞こえねえ。地下だからか?ちょっと上行ってみるか…ここでちょっと待ってろよ?」
    バタバタとエレベーターへ逆戻りしていくロシナンテへ、猫は「ウン」と返事をした。ぴちょり、羽織ったパーカーの裾から雫が落ちた。
    猫の足元はすっかり水溜りになっている。黄土色の壁と天井は雨は凌げるが、太陽の光も射さない。猫はほう、と吐いた息が少し白いことに気づいて、丈の長すぎるパーカーをしっかり身体に巻きつけた。寒い。
    不意に、ごう、と音がした。次いでタイヤが鳴く音も。凹凸のあるスロープを下ってくる車の音だ。黄土色の壁に背を付けている猫の、真前の駐車スペースに、ボンネットをシルバーに塗った黒い高級車が停まった。
    猫には車はさっぱりわからないが、この車の鼻先に付いている銀の美しい細工には見覚えがあった。ドフラミンゴのハイヤーにも、同じものが付いていたからだ。寒さに震えていた顔へ、ぽうと火が灯る。
    ぎゅ、とずぶ濡れの靴を鳴らして、鯨みたいな車のそばへ駆け寄った。もう安心だ。
    ところが、開いたのはドアではなく窓ガラスであった。黒々としたスモークガラスが仰々しく下がり、真一文字の傷痕が現れる。
    「──クハハ、こんなところに濡れ鼠が迷い込んでいやがる」
    雨よりも重く、じっとりと濡れた声色で、その男は笑った。ドフィさんじゃない。猫は目を丸くして、その場で固まった。開けられた窓から、ゆっくり紫煙が吹きかけられる。
    「お嬢ちゃん、随分と濡れてるじゃねェか。乾かしてやろうか?」
    心底愉快そうに、傷の男──クロコダイルは言った。葉巻を挟んでいた指で顎を撫でながら、品定めするように目を細める。ずぶ濡れで泥水塗れだが、男物のパーカーの下から覗くしろい手足や、水を滴らせる柔そうな身体はなるほど、あの変態鳥野郎が好みそうだな、と心の中でごちる。
    雨には嫌悪感しかないが、思わぬ拾い物ができるなら話は変わってくる。クロコダイルは忍び笑いを漏らして、ドアハンドルに手をかけた。
    そのとき、ごおおお、とやけに大きな音がした。次いでギュギュギュとタイヤが派手に鳴く音も。凸凹のあるスロープを滅茶苦茶な速度で下ってきている車の音だ。
    地上階から一気に地下3階まで下ってきた、真っ白な高級SUVは、そのでかい図体をものともしない華麗なターンを決めて、ロールスロイスの真横へ停止した。ギラリとホイールが光る。
    左側のドアが開くと、オフィスカジュアルにしては砕けすぎている尖った靴がにゅっと出てきた。
    「オイオイ、ワニ野郎…こんなシケた場所でナンパか?」
    フッフッフ…といつもの食えない笑みを浮かべて登場した男の登場に、クロコダイルの額へ青筋が浮かぶ。
    「お前こそいいのか?こんなところで油売ってて。…しかし品のねェクルマだな」
    「フフフ…デカくて丁度いいんだよ、俺たち兄弟には」
    「あッ!クロコダイル!?…さん!おいドフィやめろ、ケンカ売るなって!」
    助手席から転がるようにして降りてきたロシナンテを尻目に、大の大人二人はちくちくと言い争いを始めようとしていた。全く、いつもこうなのだ。
    しかしドフラミンゴは、冷たいものに手を引かれて口を噤む。見下ろすと、ロシナンテのパーカーを身体に巻きつけたずぶ濡れの猫が、こちらを見上げながら手を握っていた。前髪からぽたりと雫が落ちる。雨の桃園に咲く花のように、しっとりと静かな生き物が、白い息を吐いていた。
    「…ドフィさん」
    その声色があまりにも甘く、安心しきったものだったので、大人三人はシンと黙ってしまう。クロコダイルは沈黙に舌打ちをし、「じゃあな。俺は忙しいんでね、ドフラミンゴ君」と言い残すと、さっさと運転手に車を出させてしまった。
    ぴちょり、と猫の服の裾から水が落ちる。
    ドフラミンゴは濡れ鼠の髪をゆっくり撫でてやり、水を滴らせるパーカーを剥いだ。猫の素肌に張り付いたシャツの上から、自分のジャケットを羽織らせる。
    「寒くねェか?」
    「ウン。…っくしゅ」
    「フフ、どっちだよ」
    ぐっしょり濡れてもなお軽い身体を持ち上げると、しっとりした頬が擦り寄ってくる。そのままエスカレードのリアシートへと座らせた。
    「アイツには近寄るなって言ったろう?」
    「車、同じだったから。まちがえた」
    「ウチのはボンネットが黒いんだぜ?」
    今度また乗せてやるよ、と王様は笑う。ベージュのレザーシートの色が変わるほど猫の身体は濡れているのだが、一向に構わないらしい。
    ドフラミンゴがそのままドアを閉めたので、残されたロシナンテは慌てて助手席に戻る。しかし兄からキーを手渡されたので、意図が分からない。
    ドフラミンゴは3列目からバスローブを取り出して、猫の濡れ髪をわしわしと拭いてやった。されるがままになっている細い身体が、がくがくと玩具のように揺れる。
    ロシナンテはそこでようやく、兄に運転する気がさらさらないことを悟った。なるほど、家まで俺が運転手か。事故らなきゃいいが。
    そんな心配をしながら運転席へ座った弟を尻目に、兄はまるい頬を拭いてやりながら、素肌へ張り付いたシャツのボタンを外してやっていた。猫は相変わらずおとなしい。
    「…フフ、良い子だ。下着まで濡れてるな?脱いじまえ」
    …雨と泥水を頭から被っているのだから、当たり前のことだ。
    「なんだよ…コレは俺とデートするときに着ろって言ったろ?よりによってロシーと出かけるときに着けたのか?フフ…」
    「ん…っ、」
    シャツワンピースのことだ、絶対。水色と白が可愛いかった。その下の黒いレースの何ちゃらも可愛かったが。それに今、何か秘めやかな声が聞こえた気がするけど気のせいだ、たぶん。
    「…っ、ぁ…ドフィさ…」
    「フフフフフ!身体が冷えねェように、隅々まで拭いてやるよ」
    「ン……」
    風邪をひかないためだ!絶対!何やら絶対にキスしたみたいな水音がしたけど気のせいだ、たぶん。
    ロシナンテは極力何も考えないようにしてエンジンをかけた。兄の車の趣味ははっきり言ってよくはないと思うが、このクルマを運転できるのは男子として嬉しい。さァ張り切って発進だ!右よし、左よし…
    「──安全運転で頼むぜ?ロシー」
    悲しいかな、ルームミラーで後方安全を確かめようとしたロシナンテの目には、はだけたバスローブの裾やら合わせやらに手を突っ込みながら、猫の小さい唇をペロリと舐めた兄の、ニヤリとした悪い笑みが映ってしまった。
    「無理────ッ!!」
    ロシナンテの叫びに、V8エンジンの雄叫びがシンクロした。
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