お揃いの話カワイイな…。ドフラミンゴは声には出していないがジンジャーブレッドラテを飲みながら、目の前のふたりを眺めていた。整髪料のついていない髪からはシャボンの香りがしている。
「うん?どうしたんだドフィ」
顔に似合わず甘党の相棒は、ジャンクフードが好きだ。普段はハンバーガーショップのストロベリーシェイクを飲みながら、頬にポテトをくっつけているのだが、今日はクリスマス限定のチョコレートストロベリーフラペチーノを飲みながら、頬にマフィンのかけらをくっつけている。
ドフラミンゴが、今日はいつ「ついてるぞ」と、食べカスにしてはやけに大きなそれを取ってやろうかと思案しているとも知らず、ヴェルゴは旧友の視線にニコリと微笑んだ。
「…相変わらずギャップがすげェなおまえは」
「?なんのことだ」
ドフラミンゴの声に、ホイップクリームの乗ったフラペチーノを満足気に啜る、厳つい男の声はまるい。
そしてその横で、熱いマグカップとひんひん言いながら戦っている者もいる。文字通り猫舌のくせに、クリームブリュレラテなんか頼むからだ。さっきから1ミリも飲めていない。
猫はフラペチーノを啜るヴェルゴを恨めしそうに見つめて言った。
「飲み始める前に、ヴェルゴさんが飲み終わっちゃう…」
顔を見合わせる相棒と愛猫に、ドフラミンゴはニンマリ笑った。コッソリ揃いのモヘアのセーターを与えておいてよかった。相棒は白、猫は黒。毛羽立つニットがふわふわで可愛らしい。
しかしそんなことを知るよしもないヴェルゴは、む、と口を噤んで、猫のマグカップをそっと持ち上げた。
「そんなに熱いのか?」
「ウン」
どれ、と呟いた厚い唇。ふぅふぅ吹き冷まして、白い縁にそっと口をつける。猫は、自分のマグが獲られたのに文句を言わず、ヴェルゴのセーターの袖をそっと触りながら、通った鼻筋を見つめていた。
こくん。控えめに喉仏が上下する。
「──もう飲めるぞ」
ホラ、と戻されたマグカップ。ヴェルゴが飲んだところはぽっかり穴が空き、ふわふわの泡の下から茶色いラテが覗いていた。
暖かな手のひらから、マグカップを受け取った猫は、ヴェルゴの真似をするようにふぅふぅと慎重に吹き冷まして、同じ場所へそっと口をつけた。
ごくん。思いのほか大きく、丸い喉が上下する。
──ドフラミンゴは、今度は歯を見せてニィと笑った。目の前のふたりは同じ味わいにホッと息をついている。「ほんとだ、飲めた」「だろう?」…なんて笑い合いながら。
「おまえら…本当にカワイイな」
本当のことを言えば、ジンジャーブレッドラテなどとっくに飲み終わっている。それでもドフラミンゴが、長い脚を組み替え、スマホを脇に置き、文庫本も取り出さずにいるのには理由があるのだ。
長い指が、猫の小さな顎をすくう。主人に撫でられると思った猫の瞳が細まり、口元がふにゃける。
ドフラミンゴは至極嬉しそうに喉を鳴らしながら、チェリー色の唇へふわりと乗った、クリームブリュレの泡ごと、ちう、と可愛らしく口付けた。
目を瞑らない猫が、ぱちぱちと瞬きするのがおかしい。そのまま頭を撫でながら、隣の相棒へ笑いかける。
「相棒、ついてるぞ」
ココ。と自らの唇の上を、ツンツンとさす仕草に、ヴェルゴはああ、と相槌を打った。つい見惚れてしまう。ペロリと舐めるとバターと、ほんの少しのクリームブリュレの味がした。
甘いな、と甘党が呟いて、ドフラミンゴは猫の頭をかき混ぜて笑った。