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    センリ°F

    メディア欄整理のためのプラス用格納庫。ぷらいべったー以外のサブのシリーズものを置いています。

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    現パロ🃏💋🐯宅の居候猫こと🌸
    *ゆく年くる年

    -🃏(🦩)相手プラスだけど逆ハー気味
    -🐯は🃏💋宅の同居人
    -🃏がある日🌸を拾ってきた
    -恋人というよりもほぼペット扱い
    -ゆるいシリーズ

    ##同居人シリーズ

    こたつが狭い話こたつの上にはみかんの盛られた籠。リモコンは遠くにある。テレビでは年末特番が流れていたが、こたつの住人たちはその内容を理解する気もなく、ただただ背中を丸めていた。
    「ローくん、カニとエビって仲間?」
    「甲殻類だし仲間だろ」
    猫はともかく、今夜はローも反射で口をきいている。
    無駄口を叩いているのには理由がある。何か喋っていないと寝そうなのだ。
    長方形の大型こたつを導入しておいてよかった。この家の人間は規格外にデカい。今はその長辺の1つに、猫とふたり、並んで座っているローはぬくい体の方へ身体を寄せていた。くっついていると寒くない。
    190センチの男に潰されたくはないので、猫は思いきり体重をかけて寄りかかっているのだが、ローにとってはふわふわのクッションに同じである。
    もう年越し蕎麦はとっくに食べ終わった。なんならそのときは四人だったのだ。図体のでかい兄弟はその後、止む気配のない雪に、会社の通用口だかどこかの雪かきをしないとマズイとか言って着込んで出て行ったのだ。
    「暇だねえ」
    「暇だな」
    せっかく四人でやるための人生ゲームを買っておいたのにと、猫の目は新品の箱に向いてすぐに逸らされる。代わりに不満そうにローの顎髭へ頭を擦り付けると、やめろと覇気のない声がした。
    暇だが、眠りたくはない。それは珍しくローも同じであった。大晦日なのだから多少はそれらしい気分になりたい。ついでに言うと蕎麦を食い足りてねェ。ドフラミンゴめ、変にこだわって茹でたてしか出さねえからこうなるんだ。
    「…寝転がるなよ、絶対寝る」
    「ウン」
    そう言って猫を膝の上へ乗せたローは、やわい頬へ鼻先をくっつけた。冷えていた鼻先がじわりと暖まってゆく。

    そしてようやく玄関の扉が開く音がして、騒がしい声とそれに呆れる声が帰ってきた。
    「ひいーッ!寒ィ!これ明日もしねェと意味ないンじゃねェの、兄上」
    「融雪剤撒いてきたから多少は大丈夫だろう…これ以上積もるならさすがに諦める」
    かのドンキホーテ兄弟を相当手こずらせたらしい豪雪は、年を跨いで降る予報だ。「ロシナンテ、濡れた靴下そのまま入れるんじゃねェ」とか「ドフィ、それ俺のヒートテック」とか、風呂場から聞こえたかと思うと、でかい身体が我先にと暖かいリビングめがけて転がり込んできた。
    「無理もう寒い!手が冷てーッ!」
    「おいコラさん!長方形の1辺に3人は無理だ」
    「おまえは半分くらいコケてただけだろうが…ほぼ俺が片付けたようなもんだぞ…」
    「ドフラミンゴ、てめェ…」
    狭えんだよ、というローの威嚇をものともしない巨体がぎゅうぎゅうとこたつに手足を突っ込んでくる。ドフラミンゴはローから猫を引き剥がして自分の膝に乗せると、ぬくまったうなじに唇をつけた。
    「…あったけェ……」
    「あ!兄上ずりィ!ロー、俺も…」
    「誰がするか」
    ローとは反対側に腰を下ろしたロシナンテが腕を伸ばすが、もちろん突っぱねられる。湯たんぽを奪られたローは舌打ちをして肩までこたつに入った。
    「ドフィさん、ほっぺ真っ赤」
    主人に抱きかかえられた猫は、身を捩って手を伸ばした。こたつでホカホカに暖まっているそれを両頬に当てられて、ドフラミンゴは「はァ、」と本人基準でなんともマヌケな溜め息を吐く。
    「あったけェ……なあ、耳も…ああ、そうだ……はァ……」
    サングラスが曇ってゆくのをそのままに、ぬくい手のひらの感覚に目を細める。とんだ大晦日だったが、家に帰ってきたらもうなんかどうでもよくなった。こたつを導入して本当によかった。
    「兄上ずりィ……なぁ、俺にもやって?」
    「ロシー、おまえなぁ…」
    俺の至福の時を、と悪態を吐く前に、小さな手のひらがロシナンテの頬へ移る。放っておくとこっちまで抱きついてきそうな弟に苦笑した兄は「仕方ねぇな」と笑みを零した。
    「うーん!ほとんどドフィに体温吸われてるけど、いい感じだ!」
    「コラさん、たぶんそのセーター、後ろ前だぞ」
    ドジっ子は今年も直らなかったが、まあいいか。頬を包む猫の手の甲を上から包んだロシナンテは、じんわりと熱が移ってくるのを目を細めて味わっていた。やっぱり我が家がいちばんだ。
    「ドフラミンゴ、俺は月見そばでいい」
    「…寒空の下、雪かきしてきたヤツに対する態度か?それは」
    弟分の我儘に「いいから、ちょっと待ってろ」という返事は、言葉の割に声色は甘いし随分と所帯染みている。それにフンと嘆息したローは、背中をそのふとい腕にくっつけて思いきり体重をかけてやった。…が、ドフラミンゴにとってはふわふわのクッションに同じである。
    「もうこれ、引き出しのくだり終わっちまった?」
    「たぶんな。思いっきりケツしばかれてたぞ」
    「あれ痛そうだよなァ、毎年」
    「ロシナンテ、アウト〜」
    「えっまさかの唐突な暴君」
    妙な効果音付きで理不尽にコールする猫へ、ロシナンテはみかんの賄賂を手渡した。無言で剥き始めたので成功だ。その手つきをぼうと眺めながら、ドフラミンゴはやわい頬へ擦り寄る。
    「……あったけェ」
    「おまえさっきからそれしか言ってねェぞ」
    疲労と寒さで珍しく脳が停止しそうになっている男に、ローは呆れ声をかけた。ついでに妹分の手からみかんを半分奪って剥き始める。
    白い筋をチマチマ取っている猫の耳元で、大きな口が「あ」と開いた。その中へ、躊躇なく小さな指がみかんをぽいと放り入れる。大きな雛鳥に餌付けするように、猫は主人を甘やかした。甘えてくるドフィさんは可愛い。
    冷えていた手足の末端が、こたつの中でじんわりと暖まり、ちりちりと痺れてくる。足の裏をくすぐられているようなこの感覚は苦手だが、この場所から動くつもりはない。甘酸っぱい柑橘の香りが鼻の奥に残っている。ドフラミンゴは次第に重くなる瞼に、珍しく逆らえなかった。

    急に静かになったリビングで、猫はみかんを口に放り込みながら時計を見上げた。もう少しで年が変わる。人生ゲームはまだ新品の箱のまま、開けられる気配はない。年越しそばだって残っているし、まだお風呂にも入っていない。
    すう、と誰のものかわからない寝息が聞こえ始める。こたつの1辺にぎゅうぎゅうに詰まって暖をとって、狭いくせに誰も立ち上がらなくて。
    背中がぬくい。お腹に回された腕が暖かい。隣で寝落ちた兄貴分たちの体温と、自分を抱いたまま珍しく微睡んでいる主人の体温が、こたつのなかへじんわり溶ける。
    猫はそっとスマホを取り出してインカメラを起動させた。無音でシャッターを切る。小さな親指がかしかしと画面をタップすると、3つのスマホから思い思いの着信音が鳴った。マヌケなメロディとともにグループトークに送信された写真に3人が気づくのはきっと年が明けてからだろう。
    「…おやすみ」
    ふわふわの声が粉雪みたいにじんわり溶けて、最後の瞳が閉じられた。外では音もなく雪が降っていた。
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