上書き あーあ、と思った。どうしよう、という考えは、しばらく思い浮かばなかった。
シャツに口紅がべっとり付いているなあ、というのは、匂いでわかっていた。朝に寝て昼に起きる生活をしていると、頭がぐらぐらしてくる。どの女の家に泊まったのかも覚えていない。化粧水が乱雑に並べられているユニットバスのトイレに立つと、オレの首筋にくっきりとキスマークが付いていた。
あーあ、というのは、他の女にとやかく言われるのがめんどくさいなあという感情から。どうしようというのは、タツミにとやかく言われるのがめんどくさいなあという感情から。小便を済ませ、寝室に転がっていた消臭剤を全身に吹きかけた。歯磨きがしたい。どの歯ブラシが自分のかわからない。何人男連れ込んでるんだコイツ。
1904