器その敵は強く、部隊は苦戦した。
さんっ
空気が浅く切れるような音がして、目の前に素早い苦無が迫る。
豊前はその動きを何とか察知すると、身をひるがえしてよけるがそれでも的確にとらえられていた敵の一撃は、浅く豊前の頬を薙ぐ。
「っっ。いってぇなぁああーー。」
苛立つような豊前の声に、桑名の声が重なる。
「豊前!後ろ!!」
ごぉぁ!
桑名の声と空気を震わすようなうなり声に、振り向いてみれば、目の前には大太刀の刃が迫る。
仲間の脇差がカバーに入るのも間に合わず、その一撃は豊前へと吸い込まれる。
「ぐぅ!!」
重い一撃に、一瞬にして左手が動かなくなる。口の中いっぱいに血の匂いが広がり、ぐわっと体中の血が沸騰するような高揚感に包まれた。
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