今日のれっすん「おってぎっねさん! れっすんしよ!」
そう言って篭手切が駆け寄ってくる。
「今日のれっすんは『恋人ごっこ』だよ!」
「……こ、恋人ごっこ?」
レッスンをねだる篭手切には慣れたが、今日のレッスン内容は俺にとってあまりにも聞き馴染みがないものだった。
「歌って踊るのはもちろんだけど、表現力を高めるためにはお芝居をするのも効果的だって聞いたんだ」
「へぇ……それで、恋人ごっこ?」
「私が相手じゃ不満かな」
「あ、いや、そういうわけじゃないんだが……」
逆に、ごっことはいえ篭手切が恋人になってくれるのは嬉しい、なんて言ったらどんな顔をするだろうか。
「御手杵さん?」
「……篭手切こそ、俺でいいのか?」
俺がそう言うと篭手切は一瞬驚いたような顔をして、それから俯きがちにぽつりと呟いた。
558