心臓が焦げる音がする(くわぶぜ)「心臓が焦げる音がする」
例年よりも随分早い梅雨明けをニュースが告げたのは一か月ほど前のこと。梅雨など無かったような夏の暑さに毎日体が茹だった。前期の試験も半分以上が終わっている夏休み前の大学の食堂には人の数は少なくお昼前だというのに空席ばかりが目立つ。ちらほらと教科書とノートを片手に唸っているものがいるものの、ほとんどが試験からの解き放たれた解放感に酔いしれているものばかりで、そこは人は少ないもののそこはいつもと同じくらい、いやそれ以上に騒がしい場所となっていた。
「よ、ここ空いてっか?」
そんなよく見知った声に向かい合ってお昼ご飯を食べていた篭手切と松井は同時に顔を上げた。見上げた先のトレーに大きなどんぶりを一つ載せた男は、今日も今日とて韓流アイドルも顔負けの爽やかな顔で笑う。
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