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    Shrimp_Syako

    @shrimp_syako

    ニャーン

    手をつけるのに時間が空きそうなラフ、特殊嗜好の絵、掌編小説とかをぽいぽいします
    攻めを食い散らかす受けが好き

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    Shrimp_Syako

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    ジェン葵ヤッター! この後何とは言わんがするやつ

    ##C翼(文)

     イタリア某所、ご立派な家の玄関。勝手知ったる様子で少年、葵は、人の家の錠を内側から外した。今から帰るのだ。「シンゴ」まだ少し眠そうな――まだ早朝だったので――声が家の中からかけられる。家の主。ジェンティーレだった。一応起こそうとしたが眠そうだったので放置して出て行こうと思ったのだけれど、結局起きて見送りにきたらしい。
    「うん?」葵が振り向いたとき、その顔がすぐ目の前にあった。
    「あ」だれの耳にも届かないまま口と口の合間ではじけたそれは、なんとも呆けた音をしていた。

    ――顔を掴まれる。顎をぐっと持ち上げられ、唇に噛みつかれる。抵抗の間もなくずるりと入り込んできた舌が、柔らな頬の肉をこすった。
    「んっ、む、ぅ、ふぅ、ん!」
     上顎をくすぐり、喉奥をうがとうとするそれに、葵のつま先立ちの脚がふるえる。ジェンティーレのほうだって一応といったように屈んではいるのだけれども、それ以上に顎のしたに回した手で葵の顔をぐいぐい引っ張っているので、葵の体勢は大層苦しい其れになる。上から下へ。蹂躙と与う。ジェンティーレが退く様子といえばいっさいない。それはキスに夢中で気づいていないというより、混乱と興奮のあわいに見える苦しそうな自分の様子に興奮しているように、葵には感ぜられた。ただ口内を占領されているほうに文句は言えない。単純な力に勝る相手をどうにかできるわけはなく、暴虐じみた行為に耐える。
    「ん、う、ふっ、ふあ、うう……、うーっ……」
     ことさら卑猥な音を立てて唾液を吸われて、飲み下す音が繋がった口から頭蓋に響いて羞恥を煽った。舌を舌で撫でられて、ひくひく震える肩を宥めるように摩る手のひらが熱い。
     始まりが不意打ちなら、解放も突然。葵は蹂躙していた男の胸に握った拳を当てて、なんとか微かに距離を取り、強引にまぜあわされた唾液を口の端からこぼしながら息をした。こんなの別れのキスなんかじゃない。どう考えても、寝台の上でするものだ。「お行儀が悪いことで」ジェンティーレは葵のしまえていなかった舌を揶揄し、また顔を近づけて、かわいがるみたいに食んだ。
     それで葵の、なにがしかの、スイッチ……みたいなものが入った。その心情に合わせてあえて端的に言えばはっきりした欲情。舌の交接に延々と炙られた性感が、今のでついに我慢がきかなくなった。(こいつ、本当におれを返すつもりなの? ここまでしといて?)もう、どれだけからかわれてもいいと思った。どうにかなりたくてたまらない。「もういい、おれ帰んないから」男を押し除け、降りたばかりの玄関をまた上がる。

     その意味を頭で理解するよりも早く、ジェンティーレの右手は自然に、また勝手に、鍵をかけなおしていた。錠の落ちる音で正気に戻る。手の内におさまるいきものを抱きよせる。
     背中から飛んできたのが意地悪い言葉じゃなくて腕だったことに驚いた葵は少しだけ身動ぎしたけれど、願ってもない展開に身をまかせることにした。なにしろ早くまた・・ことに及びたい。ご機嫌を取らなくていいのならそれでいい。強く、強く、抱きしめられる。葵の狭い背中と、期待と興奮でどくどくし始める心臓を抱えたジェンティーレの胸とがぴたりと合わさる。「いいのかよ」たとえ掌を返されたってもう離すつもりはこれっぽっちもないのにジェンティーレがそう言ったのは、おとなしく体を明け渡すために頷くその姿が見たかったからだった。
     すぐに触れてしまえるところに差し出された、赤くなった耳の裏にジェンティーレが唇を落とす。首筋に舌がつたい、不意を突かれた葵は背をのけぞらせた。吐き出された熱い息やか細くあえぐ声に男の理性はもはや焼き切れる寸前まで追い詰められ、目はくっと曲がった腰の悩まし気なラインに釘付けになる。その下でうねる肉の動きが見えた気がした。
     焦った手が腿と胸元まで這ったところで、「ねえ、だからさあ、部屋まで行こうってば」葵が腕にしがみつく。上目遣いに大きな黒いひとみをしきりにうるませて「おねがい」と囁くから、ジェンティーレはもうたまらなくなって、その体を横にして持ち上げた。「うわ、」小さく声をあげたがかまうことはない。たいして長くない廊下を、長い足を目一杯に開いて寝室へ逆戻り。
     もう普段のような大人ぶったことを言ってる場合ではなくなった。だって心臓があまりにもうるさい。死んでしまう。はやく手に入れなければ、気が狂ってしまう。
    「おれに抱かれるために生まれてきたんだろ、おまえ‥‥」
    「ほんとになに言ってんの」呆れた声をあげながら、しかし葵は手を伸ばしてジェンティーレの首に腕を回してやった。「でもまあ、そういうことにしといてやろうかな」
     頭をがんとやられたような心地がしてジェンティーレがうめく。ちょっと、かわいすぎやしないだろうか。夢だったりして。ああ、もう、それでもいい。かまわない。それなら、おれも臆面なく、ばかみたいに優しくできる。一日中、覚えたての子供のように、享楽に耽ってやろうじゃないか。
     いまからふたりでめちゃくちゃになるための部屋の扉はもう目の前にあって、蹴破らんとする勢いで開け放った。
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