がたん、ごとん。
遠くで、電車がはしる音がする。
江戸240年余りの歴史の中で日本に電車が通ったことはないから、歴代の将軍たちは道路や地下をレールに沿って走る大きな鉄の箱に対して自動車や飛行機と同じように驚きと好奇心、そして少しの恐れを持って敬遠していた。
しかしながら現代社会ではこれらの交通機関に乗らなくては撮影の現場に向かうことすらままならない。新しい物好きの初代様や吉宗さん、幼さ故か何にでも興味津々の家継くんはすぐに慣れ、籠や馬よりも楽で便利な足として利用するようになり、それを見て他の面々も使うようになっていった。
慶喜も普段はバスを、余裕があるときや、先代や他のグループの面々との移動の際はタクシーを、県を跨いだり海外遠征の際は飛行機を使うが…
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