見失ってしまいそうな幸福を インスタントラーメンに湯を注いでいたら、案の定アイツも「オレ様も食う」と言い出した。
「オマエはさっき菓子を食ってたろ」
「別腹」
どうせこうなると思って、ケトルには余計に湯を沸かしてあった。アイツは備蓄品を入れてある棚からカップラーメンを取り出し、線まで湯を注ぎ入れる。あとは三分、待つだけ。
がっつり食べたい時は円城寺さんのラーメンに限るけど、どうしようもない夕方の小腹には、この程度でいい。麦茶をコップに用意して、蓋を剥がして、手を合わせていただきますを言う。
俺が麺を啜りだしたのと同時くらいに、アイツも蓋を剥がした。三分待ちきれなかったのだろう。
「まだ硬いだろ」
「ヘーキだっつの」
ズルズルと勢いよく口に吸い込まれていく麺から汁が飛ぶ。仕方ない、ラーメンを食う時の宿命だ。机は後で拭けばいい。
2326