Heartfelt Memories(旧題:記憶は心の底に)⑥―降谷Side 3月―
三月十日、日曜日。
三年生の卒業式を間近に控え、赤井のピアノの練習も佳境に入っている。平日も毎日練習しているので日曜日くらいは休んでもよいのではないかと思ったが、赤井は朝からずっと部屋でピアノの練習をしていた。寝室から遠い部屋にピアノを置いているので、ピアノの音色はほんの少しだけ聞こえる程度だ。ある程度、防音の施された部屋のためか、何を弾いているのかまではわからない。
この家にはもともとピアノはなかったので、練習するときには学校の音楽室へ通っていた。当然、音楽室が空いている日中の時間しか練習できない。卒業式の日から逆算し、練習の時間が足りないと踏んだらしい赤井は、電子ピアノをレンタルしたいと降谷に相談してきた。コナンの知り合いからレンタルさせてもらえる目途が立ったのだという。
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