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    CitrusCat0602

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    CitrusCat0602

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    よその子の雛之さんが化け物退治するだけの二次創作だよ
    ぐろいよ
    文章あんまり得意じゃないので拙くても許して

     がらり、瓦礫が崩れた音を聞いて雛之は静かに顔を上げた。岩壁を飲み込み、じわじわと侵食しようとしていた肉腫を、片手に携えた槍の穂で削ぎ落す。

    「……思っていたよりも速度が遅いですね。」

     雛之は誰に言うでもなくそう呟いたが、周囲に彼以外の人影はない。他の場所に伸びた肉腫の対応に向かっているのだろう、然程気に留めずに雛之は歩みを進めた。ごぽり、ごぽり。水が湧きたつような音と共に、鉄錆のような不快な匂いが辺りを漂い始める。ところどころ地面や壁に赤い肉片のようなものが張り付いていて、脈動しているかのように時折震えていた。こうも数が多いと、一つ二つ削ぎ落したくらいでは何の意味もないだろう。雛之はそれらを無視して歩き続ける。

     根っこのように伸びた肉腫を辿れば、大した苦労もせずにそれを見つけることができた。ごぽり、また音がする。
     雛之はゆっくりとそれを見上げた。てらてらとした表面を蠢かせ、木のように上に伸びたそれにはいくつか穴が開いている。穴の中には赤色の液体が満たされ、それを覆うように膜が張られていた。ごぽり、ごぽり。どうやら湧きたつ音はその中からしているらしい。何かがその中に鎮座しているのに気が付き、雛之は穴を覗き込む。

    「……これは、腕輪……?ここには何かの布切れ……。……。」

     そのまま視線を巡らせた雛之は、その一つで液体が一等激しく泡だっているのを見た。蓋を開けた炭酸飲料のように泡立つその液体。中に何が入っているのか、細かな泡のせいで到底わからない。しかし雛之は状況を理解し躊躇いもせずにそれに近づくと、その膜に穂先を押し付ける。つぷ、と抵抗なくそれが沈み、内容液が穂先と膜の隙間からごぽごぽと流れ落ちた。周囲に生臭いような甘ったるいような、ともかく胸のむかつく匂いが漂って、雛之は僅かに顔を顰める。彼は中身を傷つけぬよう慎重に被膜を裂き、すっかりそれを開いてしまうと、中に両手を突っ込んだ。
     彼がそうして取り出したのは、一人の子供。どうやら意識がないようだが、大した怪我もしていない。子供は何度か咳き込んで桃色の液体を吐き出すと、常の呼吸を取り戻す。それを確認していた雛之は、目の前の肉塊が大きく震えたのに気が付いた。

     咄嗟に子供を脇に抱えて飛びのく。目の前の地面を赤い何かが削り取って行った。大気が震え、人喰いの叫び声が響くのを聞きながら、雛之はちらりと子供を見やる。獲物を取り上げた雛之を狙いまた肉腫が動いた。雛之は即座に踵を返す。それを逃がすはずもなく肉腫は走る青年を追った。
     迫る肉腫の腕を交わしながら、周囲の環境に目を配る。そしてトンネル状に抉れた大岩を見つけ、ちらりと青年は後ろを確認した。自分を追う触腕は最早一つではなく、逃げ足の速い獲物の為に幾本にも増えている。彼は走る速度を速め、トンネルの入り口へ滑り込んだ。知能は然程高くないのだろう、背後で触腕が岩に激突した音がする。振り向けば、然程狭くもない入り口に触腕が詰まっているのが見えた。

     雛之は一つ息をつき、子供をもう一度確認する。しかし相変わらずその子供は気絶したままだ。数分の間考え込んで、雛之はトンネルの中ほどまで進むと岩の影に子供を隠す。そして一度深呼吸をするとトンネルから外へ出た。ぐるりと一周して先ほど自分が入った入り口に戻る。
     相変わらず中へ押し入ろうとひしめき合う触手を見た彼は腕を振り上げた。振り下ろした槍が分厚い肉を断ち切る感覚が伝わる。続いてどちゃりと力なく触手の先端が地面に落ち、切り口から赤い液体を滴らせながら触腕がのたうち回った。

    「私をお探しですか?」

     ゆるりと、いつもの穏やかな笑みで雛之はそう問いかける。肉腫の腕たちは大きく地面を叩き、そのまま囲い込むように触腕を伸ばした。雛之はそれが圧倒的な早さで自分に肉薄するのを眺める。

     その先端が雛之を捉えようとしたその瞬間、彼は大きく跳躍した。雛之を捕らえることのできなかった肉腫は、しかし急に止まることもできず勢いのまま互いにぶつかり絡まり合う。お互いにどうにか離れようとしているが、無遠慮に引っ張るせいでそれが一層固く絡んでしまった。続いて雛之は着地し、そのまま本体がいる方向を見やる。

     肉塊がくっつきあってできた木のような見た目のそれは、中央に大きな目玉を抱いていた。まるで死体のように瞳孔の開き切ったそれはじいっと雛之を見つめている。先ほどまで存在していなかったそれに、雛之は黙ったまま目を細めた。

     ずるり、ずるり、ずるり。絡まり合った触腕が動く音がして、雛之はゆっくり首を動かす。餌としてじっくり食うよりもさっさとミンチにしてしまった方がいいと思ったのだろう、それは絡まり合ったまま上に持ち上がり重力に従い雛之を押し潰そうと迫った。破裂音、続いてびちびちと地面に水気のある何かが叩きつけられる音。雛之が懐から取り出した拳銃に打ち抜かれた触手の肉片が地面に落ちる。
     力なく地面に落ちた触手の塊に彼は足をかけ、駆け上った。それを止めようと迫る触腕はしかし雛之を捕らえることができずに空振り、或いはその手に握られた銃や槍でただの動かぬ肉片に変えられていく。

     銀の髪を靡かせながら巨大な瞳の前まで走り抜け、その瞳孔にうつる自分を見ながら雛之は槍を深く突き刺した。

    「ギイィイイィイィィイィ」

     金切り声が響く。肉腫が大きく震え、足場にしている膜の下で液体が激しく泡立つのが見えた。雛之は槍の柄を強く握り直し、更に奥深くへ押し進める。叫び声が大きくなるのを聞きながら、槍の表面を撫でるように手を滑らせ引き金に手をかけた。穂先が抜けぬようにしかと片手で固定して、雛之は引き金を引く。くぐもった爆発音と共に目玉が勢いよく弾け飛んだ。びちゃびちゃとその中のよくわからない液体や肉片を浴び、それを拭うこともせずに彼は次に備える。

     沈黙。足から僅かな震えが伝わり、やがてそれすらもなくなる。最後に一つ、ごぽりと気泡を残し、完全にそれの生命活動が停止した。雛之は少しの間そのままの体勢でいたが、やがてそれをやめると袖で顔の液体を拭い取る。

     ぐちゃりと嫌な音をさせながら、雛之は人喰いの死体から地面へ降りた。槍を一度振って肉片と血を落とし、それから銃を再び懐へしまう。そうしてから一度息を吐き、子供を連れて移動しよう、と先ほど子供を隠れさせた場所へと向かった。
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