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    CitrusCat0602

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    CitrusCat0602

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    酔った勢いで自分のことが好きか聞くプロキオンさんに滾って書いた妄言文字です
    うちよそ

    「お帰りなさい!」

     酔っ払って帰ったら何故かチコーニャが家にいる。懐かしい状況だなと思いつつ、プロキオンはただいま、と返事をした。

     グラウクスの手で作り替えられて、今の彼女は本来の彼女とは違う人格を持っていた。鎮圧されたあとのグラウクスは深く後悔し、徐々に記憶を返していくと言って彼女を手放したのだが、果たして元の彼女に戻るかそれとも今の彼女の人格のままなのかは彼にも分からないらしい。プロキオンは色々と複雑な思いでもそもそと自分の膝に乗っかってくる彼女を見た。
     苦い思いを感じながら、それを誤魔化すように缶を手に取る。かしゅ、と軽い音と共にプルタブを引いて中身を呷った。

    「お酒?」
    「せやで」
    「私も飲みたい!」
    「あかんよ、チコちゃんはべらぼうに弱いんやから」

     ちぇ、と唇を尖らせて伸ばしかけていた手を引っこめる。それを偉いなあと褒めてやれば、とても嬉しそうに彼女は笑った。そのまま自分に抱きついてすりすりと頬擦りをしてくるのを感じながら、プロキオンはふと今の彼女に会った瞬間のことを思い出す。
     ……自分に対して何の感情も抱いていない瞳だった。自分を見てもちっとも嬉しそうにしないし、誰かしら、なんて首を傾げてまじまじと顔を見てきていた。いつも、その種別に彼が気づいていたかはともかく、溢れんばかりの愛情を彼に向けていた瞳は、あの日確かに他人を見る目で彼を見ていたのだ。
     それに衝撃を受けて、その衝撃のままグラウクスに詰め寄った時に彼女が見せた敵意ときたら。だって怒ったりしている時でも、彼は彼女からそんなものを向けられたことはなかったから。
     はあ、とため息がこぼれる。不思議そうにこちらを見上げる視線に、プロキオンはふふ、と僅かに笑った。どうせ忘れるだろうから、言ってみようか?なんて、酔いが回って普段ならしないような思考が頭をよぎる。

    「チコちゃん。……チコーニャ」
    「なあに?」
    「僕のこと好き?」

     ぱちりと瞬きをして、チコーニャはプロキオンを見上げた。次いで花の咲くような笑みが溢れる。

    「誰より大好き!」

     結局記憶がなかろうが彼女は彼のことを何度だって好きになるのだ。その事実をプロキオンが知ったのはチコーニャがこうしてニヴルヘルに戻ってきてからのことだけど。きっとチコーニャの中でプロキオンは運命の人、なのだろう。
     チコーニャはむぎゅっと彼に抱きついて、その勢いのまま唇を合わせようとした。その唇にそっと指先を当ててそれを窘める。なんで?と言いたげな瞳にプロキオンはまた笑った。

    「そういうのはちゃんとしてるときにしよな、おひいさん」

     いつもと変わらない見守るような優しげな瞳に、チコーニャは一瞬酷く傷ついたような顔をした。しかしすぐにコミカルな膨れっ面になり、ぺち、と文句ありげに彼の胸を叩く。

    「ちゃんとっていつ?」
    「何時やろなぁ」
    「誤魔化された気分」
    「誤魔化しとるからなぁ」

     ぶすっとした顔のまま、ぽす、と自分に体重を預けてくるその子にプロキオンはくつくつと面白そうな忍び笑いを零した。そのままソファの上に体を横たえて、自分の肩口に顔を埋めて拗ねている彼女の髪を、優しく優しく何度も撫でてやる。
     酔いが回って雲の上にいるようなふわふわとした感覚を覚え、更に暖かな温度を腕の中に抱え込んでいるものだから、やがてプロキオンは眠気を感じ始めた。このまま寝てしまおうか?と思っていると、ふと視界の端で彼女が顔を上げるのが見える。

    「なんで私がプロキオンさんのこと好きか聞いたの?」

     囁くような、そんな声で彼女は尋ねた。プロキオンは眠そうに瞬きを繰り返し、ふっと笑う。

    「チコちゃんは僕にとって特別な女の子やから……」

     耐え難い眠気に身を任せ、プロキオンはその言葉を最後にすぅと寝息を立て始めた。今の彼は完全に無防備なので、やろうと思えばきっと色々自分の都合のいいように彼から奪えるけれども、でも特別な女の子、という言葉が嬉しかったチコーニャはそうしないでいる。
     今日はこのくらいで勘弁してやろう、なんて思いながら、そのままチコーニャも眠ることにした。
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