初恋一
十も年上の姉は、とても美人で気が強かった。幼馴染の真一郎くんは暴走族で総長をしていて、たまに姉と夕飯の買い出しに出た時にすれ違えば笑ってバイクの後ろを指さし、今度デートしようと満面の笑みで誘っていたのを覚えている。けれど姉は何よりも暴力を嫌っていて、男のロマンというものがわからない、拳も顔も血まみれ体は痣だらけで喧嘩することに理解ができない、とよくボヤいていた。姉は頑なに真一郎くんの誘いを断り続け、付き合って欲しいという告白も喧嘩を辞めるんだったらいいと、とんでもない条件を提示していた。そんなのできるわけないのをわかっていてだ。
結局真一郎くんが総長という肩書を捨てた頃、また姉に告白をしたらしいけれど、今まで喧嘩を優先されて付き合ってこなかったという経緯もあってか、姉自身今更どう答えを出すのか正解か悩んでいて交際には至らなかった。
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