思われニキビ(知己の縁談①)町を賑わせる、女達の噂は、いつだって美容や色恋のことばかりだ。
一人町に降りてきた魏無羨は、買ったばかりの饅頭を口に放り投げ、その話を聞いていた。
彼女達が声高に嘆く「顔のにきびが治らない話」は多くの男にとってどうでもいい話題だろう。
しかし彼女達にとってはとても重大なことなのだ。
それも茶屋の奥から出てきた女将が「顎のニキビは殿方から思われている証だよ」と胡散臭い縁起を語るまでの短い間だったが。
(思われニキビか、可愛いねえ)
さっきまでこの世の終わりのように悲壮な表情をしていたのに、もうけらけらと笑っている。
蝶が花から花へと移ろうように。
彼女達の話題はいつのまにか、顔の出来物の話から、旬の恋愛話へと移り変わっていた。
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