何もかもが遠ざかっていく。
目がひどく熱い。喉の奥も引きちぎれそうなほどに痛む。けれど身体のことはもはやどうでもよかった。ひたすら空虚の底へと落ちていく中で、耳鳴りのような残響が止まない。
(脹相)
――九十九。
(〝呪い〟としての君はここで死んだ)
――九十九。
(生きろ――今度は〝人〟として)
――どうしてだ、九十九。
他にもう何の音もない。光すら。ただ落ちていく感覚だけが意識をこの身に留めている。
問うたところで応えがあるはずもなく、暗闇に焼かれている瞼には、解かれた結界の狭間から最後に見えた九十九の姿が映り続けたままだ。
結局這いつくばっていることしかできなかった俺が、何を喚いたとて加茂憲倫の注意を引けたとは思えない。構わずに術式を放ったところで、あの運命を断ち切れる望みは正直皆無に等しい。それでもあれが、あそこだけが、俺に残された最後の意味であるはずだった。
27547