きいろの黎明●
目が覚めたら暗闇だった。
ここは病院で、ベッドの中で、大人達がたくさんいて、家族が死んだことを伝えられ、警察があれこれ聞いてきた。
……よく、分からなかった。
ただ、真っ暗で、真っ黒で、「なんで真っ暗なん?」「電気つけへんの?」と聞いたら、眼球が二つとも壊れてしまったことを知らされた。
それからのことはよく覚えていない。
気付いたら、吹雪の中を――病院から抜け出して――暗闇を――素足で歩いていた――目を覆う包帯を引き千切り、空を仰いだ――太陽も星もない、果てしない闇が、暗闇が、ぽっかりと空いた大穴のような空が、そこにあった。
「見えへん……」
目を見開いたまま、呆然と呟いた。……だが、どうしたことか。
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