夕景 一日の終わりが近づいている。今日予定されていた有魂書や有碍書への潜書は無事終わっている。自由行動で外出していた者達も夕食を図書館で摂る者は直に戻って来るだろう。残すは夕餉の時間だ。
そこかしこ人が活動する音と気配を感じながら、芥川は金色に染まる廊下で掲示板を眺めていた。無意識に手にしていた煙草を口にする。そこには特務司書が組んだ明日の予定が既に張り出してあった。
「うわ、第一会派かよ。明日は医務室行きを免れないな」
「寛」
いつの間にか、良く馴染んだ男がすぐ傍にいた。今も昔も頼れる友である菊池寛だった。彼が敬遠したい第一会派は最前線の有碍書を任せられることが多い。うんざりしたように彼は肩にのしかかってきた。
2914