朝ごはんの用意をするためにキッチンに立っていると、おはよぉ、とまだ眠そうな声が後ろから聞こえた。振り向こうとした私に、ぽすんとぶつかるようにくっついてきた浮奇がスルッとおなかに手を回す。私は笑いながらその手に触れ、首を後ろに傾けてふわふわの髪を撫でるように頭をくっつけた。
「ふふ、おはよう浮奇」
「んん……」
「まだ眠たい? コーヒー入れよっか」
「んぅ……ありがと……」
「このままくっついてる? それとも顔洗ってくる?」
「かおあらう……」
うにゃうにゃとそう言った浮奇は、だけど私に抱きついたままここから動きそうになかった。浮奇は頭の回転が早くていつも楽しそうに私のことを翻弄するけれど、寝起きだと全然脳が動かなくて難しいこと考えられないんだよねと言っていた。それなのに起きてすぐ私のところまで来ておはようと言って抱きついてくるんだから可愛くて仕方ない。
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