大雪の夜に/キラ門 どどどどど、と長い轟音が家全体を震わせたので、その振動で門倉は目を覚ました。屋根の雪が塊になって滑り落ちたのだ。次いで隣の部屋から足音が始まり、廊下を軋ませ、玄関の重い扉をくぐって出て行った。雪を踏む足音が壁に沿ってぐるりと回る。まだ床に入って三時間かそこらだ。瞼の重さに逆らわず眠ってしまおうかと思ったが、慌ただしい身支度の気配がしたので布団から這い出た。
照明の眩しさに何度か強くまばたきをする。姿をはっきり捉える前に「悪い、起こしたか」と声を掛けられた。
「いや……なに、どうしたの」
「排気筒が埋まってる。起きたならお前も手伝え」
雪国に暮らしていれば仕方のない事もある。話している間にもキラウㇱは分厚いジャケットを着込み、ブーツの紐を結び終えていた。はいよと返事をして門倉もジャケットを手に取る。元々はキラウㇱの物だった厚手のダウンジャケットは、いつのまにか門倉の雪掻き用になっている。ポケットには軍手が入ったままだ。
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