たぶん本能【サンプル】 舌を舐めたらざらっとした。
これまでにはなかった初めての感触に驚いて、しかし「そういえばそうか」と納得したら今度は徐々に感動が湧いてきた。もう一度確かめたくて唇を合わせて舌を差し込み、同じく細かな突起の生えた純太の舌を探ってみる。
マジックテープのザラザラな面みたいに、ふたりの舌が合わさった。けれど絡ませ合うには噛み合った突起に抵抗が生じてしまい、スムーズにいかない。少し煩わしく思ったがこれはこれで珍しい感覚で、もっと知りたくて純太の口の中を探った。
「ん……」
「……痛い?」
身じろいだ純太に気付き唇を離すと彼は「大丈夫」と照れた顔で小さく笑った。「すごくね? これ。こんな感じなんだ、猫って」
ああ、すごいな、とオレも頷く。純太の髪を分けてピンと立った小さなネコ科動物そのものの耳を撫でると、その三角形がひくひくと揺れた。
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