こどものひ緑の若葉がどんどん成長する5月。
緑溢れる草原のあたたかい芝生の上に敷物を広げ、荷物を敷き並べます。
「これで…全部だな。」
敷物の上には沢山のお弁当と飲み物。そして…。
「あぅ…。」
「だぁ…。」
風通しの良い日陰の場所に置かれた可愛い籠の中には紺色と桃色の双子の子。
「ママ、パパ、見て。2人とも嬉しそう。」
籠の側では藤色の子がにこにこしながら覗き込んでいます。
「今日はお天気が良いからね~。皆で来れて良かったよ。」
「…そうだな。今日は寒すぎず暑すぎずで調度良い。この子達も過ごしやすいだろう。」
ママとパパと呼ばれた2人が藤色の子のお話に交互に返事をします。
その反応が嬉しかったのか、藤色の子は
「ねえねぇパパ。おなか空いちゃった。」
と、父親に向けてお腹をさするようなジェスチャーをしますが、
「まだ来たばかりだぞ。まずは剣のトレーニングをしてから…」
父親から見れば何時もの事なのか、それほど慎重には捉えられませんでした。
「えぇ~っ!」
更に「その方がお弁当もいつもより美味しいはずだ。」とまで言われ、
「…しかたないなぁ。」と言いながら藤色の子はしぶしぶ剣を持って父親と一緒に広い場所に向かいました。
「んもぅ、パパったら…あの子と遊びたいのなら回りくどく言わなくてもいいじゃない。…ねぇ。」
母親は優しく2人の子を撫でます。
「…ほんとあの時から変わってないんだから……。」
そう言いながらも母親の目尻が下がっているのは、あの時を思い出しているからでしょうか…。
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『ぽよっ!』
『なっていない!もっと機敏に動かなくては!』
『ん……ぱぁゅ…!』
『そう…そうだ…いいぞ…その力強さと身のこなし……それこそ星の戦士にふさわしい…。』
『……たぁっ!!』
『……素晴らしい……さすがソードを…ものにしたな…カービィ……。』
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あの懐かしかった日々と素敵な思い出……
「あの時のパパも…カッコよかったなぁ…。」
と呟きながら回想に耽っていた母親の横から
「ん?何かあったのか…?凄く良い顔をしているが…。」
「ママ~どうしたの?」
2人が顔を覗かせます。
「わ…っ!…びっくりした~…。」
「今しがた、剣のトレーニングが終わってな。昼食にしようと話をしていたところだったのだが……。」
母親の近くに腰かける父親の横で、
「あ~!ママお顔まっ赤~。」と言いながら子供が母親の顔の赤さに気付き、声をかけます。
「…大丈夫か…?今朝も準備等で色々と忙しかったから…体調でも悪くしたのか…?」
父親は他にも思い当たる節があるのか、いつも以上に焦ります。
その様子を見て母親は笑いながら、
「……大丈夫だよ。あのね……今が凄く幸せ……って思ってただけ。」と答えます。
まさかの答えに
「「…え?」」
子供と父親、2人が同じタイミングで驚きました。
「さ、お昼ご飯でしょ!僕の作ったのもあるけどワドルディ達が美味しいのを沢山作ってくれたから。ね!食べよう食べよう!」
母親がたくさんの弁当箱を開ける横で、
「コックカービィのご飯は特に美味しいからな。頂くとしよう。」
父親は飲み物の準備をします。
「わぁい!ごはんごはん~!」
心地よい風が吹く草原に、明るく賑やかな声がひびきました。