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    tendoooooooooon

    赤木しげる×カイジしかない
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    ☆quiet follow
    POIPOI 19

    tendoooooooooon

    ☆quiet follow

    落日雨が降りそうだ、と思っていた黒い雲はいつの間にか消え、淡い日が差した。
    かと思えばまた曇り、今度は強い風が吹いてきた。
    昼のように正しく明るくなったり、暮のように薄暗くなったり。

    見慣れた窓ががたがた音を立て、居慣れた室内は強風にあおられてぎしぎしと軋む。

    銀の浅皿に煙草の灰を落とす。丁寧に吸ったそれは、大分短くなった。
    さいごに一度吸って、押しつぶす。

    夏のような暑さと、春先のような肌寒さを交互にむかえる こんな滅茶苦茶な気候では―
    気分というものに影響がでても、仕方ないのかもしれない。

    片付けられた部屋のベッド枠に背を預けて座り込み、膝を抱えて呻く開司を 
    短足机を挟んだ斜め右から赤木は眺めた。

    暇なので会いに来た、と訪れた昨日は機嫌よく奢られて飲んで食っていたのに、今日はこれである。
    離れた時期もありながら、それでも細いつながりは消えず 気づけば中々にながい付き合いになる。
    それでも、この男の精神的な開閉器の具合は よくわからない。 

    よくわからないが、原因はわかる。わかりやすすぎる。

    勝負である。

    過去に在った 昔の勝負のなにかを思い出して、あるいはまだつけられていない決着について どうしようもないことになっているんだろ。
    後悔と、羞恥と、興奮と、闘争心とが入れ違いに襲ってきて どうしようもないのだろ。


    昔はこの姿を見るにつけ腹が立ったものだった。
    同じ空気を吸うのも億劫で、居心地が悪くて、苛ついては机を蹴飛ばして出ていくか
    襲い掛かって喧嘩をするか。

    今はそれをしない。
     
    お互いに博奕者である。そうであるから惹かれて、こんなに長いこと縁を保っている。
    出会った頃は 開司が辿り、保持している勝負のすべてを知りたくて、力づくで引きずりだそうともした。
    どんなに傷を負わせ泣かせたってかまわない、どんな手でもいい、肚の底をえぐりだしてやりたかった。

    今はそれをしない。


    侵せない場所があると 赤木はもう知っている。
    誰にも入らせない 入らせたくない 入れられない そういう記憶がある。

    赤木は一夜で人生のすべてを生き、そして負けた。

    言葉にすればこれだけの、さらりとした事実の中に どうやっても語り尽くせない
    どうやったって誰にも理解させられない遣り取りがあった。
    戦った相手以外には絶対にわからない。

    非道く無理強いをして あるいは丁寧に解かして 開司に吐かせられたとして。
    赤木自身が それを理解できないとわかった。

    「大丈夫だ」

    気休めもいたわりも 開司に届くことはないとわかっているからこそ
    どんなに安っぽい言葉も気にせずかけてやれる。
    いったいなにが、どうして、どういうふうに丈夫なものか?
    嫌味にもなりやしないのだから。

    鋭い目がこちらに向けられる。珍しく、泣いていない。こういうふうに射られるのは好きだ。
    赤木は思わず目を伏せて笑う。

    それがお気に召さなかったか、
    がん!と開司に蹴られた机が揺れ、カーペットにひっくり返った銀皿から 吸い殻が散らばる。

    「出ていけっ…!」

    大声で怒鳴りたいのを必死に抑え、絞り出すといった風情の声。
    大人になったものだ、オレも お前も。

    「そうしよう」

    いくらかの札を置き
    代わりに開司の開けた 赤い煙草の箱を黒いシャツの胸衣嚢へねじ込んで、赤木は立ち上がる。
    慣れた鞄一つだけ持って、玄関へ。
    背に突き刺さる視線を受けながら。

    お前の脳みそを克ち割って 螺子を外したのはオレじゃない。
    オレの心臓に血を送り込んで 息をさせたのはおまえじゃない。
    唯一無二とは他にないからそう言うのだ。

    いつかアンタと、いつかアンタを、と燃えていた欲もいまは月のように欠けている。

    埋まらない溝に。ふたりでいてもひとりだと絶対に思う。
    それでもいいとも思う。
    ともに時間を食いつぶすことを愛しいと思う。
    ぐうぐうと呻る開司のそばに 黙って居てやれる。

    ふたりで飲んで食って 話して、それが楽しい 入れて出して、ゆるやかに体温を分け合って心地よい

    博奕者がふたりでいて 
    それでいいというのなら
    愈々


    「お前が」
    靴を履いて、玄関のドアをすこしだけ開ける。強い風がドアを押し戻すけど。
    決して振りかえってやりはしない。
    開司もなにも言わない。

    「たったひとこと、オレを”いらない”と言えたなら」
    「お前がいらないならしょうがないと、用済みの男らしく 潔く消えてやってもいいけれど」

    「言えるかな」


    別れが近い。


























    こんなこといって普通に勝負欲爆発熱血壮年にリバウンドして一生仲良くやってく(幻覚)
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