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    trifle_trifle_

    @trifle_trifle_

    @trifle_trifle_の落書き箱です。

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    枷は外さない
    外内(とぼちぼ)。ちぼしかしないけど。
    あれこれあった翌朝の話。

    枷は外さない「……喉乾いた」
    いつもの寝起き以上に乾いた喉。気だるい身体を引き摺って、俺は洗面所へと向かった。水を注いで煽れば、冷たい水が少し身体を覚ましてくれる。
    「ー……」
    散々枯らされた喉が、いまだ掠れた音を出した。腰の気だるさも相まって、昨夜の事を思い出し、わずかに顔が熱くなる。そして、極めつけはこれだ。俺は鏡を見てため息をつく。
    「……うーわ、またかよ」
    首や胸、腹まで散らされた、覚えのない赤い痕。内腿にまでおよぶそれは、紛れもないアイツの執着の現れで。普段はそんな事おくびにも出さない癖に、こういう時は執拗なまでに痕をつける。しかも決まって俺が前後不覚になってからだ。それこそ何を口走ったか覚えていない位に。
    (グダグダ考えても仕方ねぇ)
    赤い痕を眺めていても、ただただこっぱずかしいだけで。俺は用を足してから、着ていたパンツと布団カバーを洗濯機にかけて浴室へと向かった。使い慣れた蛇口を捻れば、徐々に熱気が浴室を満たしていく。
    「あー……」
    熱いシャワーの湯は、まとわりつく汗と寝起きの気怠さを洗した。頭を洗おうとシャワーを止めれば、ふと鏡に写った自分と目が合う。
    「……」
    無論そこには俺が写っているのだとわかっているが、アイツに素っ裸を見られているようで妙に落ち着かない。それこそ昨晩の様に。これだから風呂で鏡を見るのは嫌なんだ。特にヤッた次の日の朝は。
    「ハッ、なんでこんなに似た奴とヤッてんだか」
    一人の風呂場で小さく自嘲する。
    人間で言うなら、一卵性の双子の様によく似た外見。側から見れば、ここまで似た奴とセックスするなんて酔狂だと思うだろう。当の俺でも思う。そりゃ造形が似ているから勝手がわかるし、溜まるタイミングも近くて都合が良いってのもあるが、俺の場合一番大きいのはそこじゃない。一番は奇妙な安心感からだ。薄暗闇でどろどろと混ざり合う様な感覚や、限界を超えて与えられる快楽、ブッ飛びそうになる意識に、奇妙な安心感を得るのだ。一つには戻りたくない癖に、一種の心地良さを得ているのだから、我ながら趣味が悪い。
    (アイツもアイツだけど、俺も俺か)
    軽くため息をつき、頭でも洗おうとシャンプーのノズルを押せば、カシュッと軽い音がした。
    (……買いに行かなきゃな)

     シャワーを終えたら今度は飯だ。腹が間抜けな音を立てている。ストックはないかと冷蔵庫を覗けば、ラップに包まれたサンドイッチが入っていた。ああ見えて自炊派の奴が置いていったのだろう。俺はそれを取り出してテーブルについた。今日の内容はハムと卵、レタスにトマト。それにかぶりつけば、多めに入った辛子が心地よい刺激を舌に伝える。もう何年も食べ慣れた味。少し辛いそれは「俺達」好みの味で、俺は苦笑した。味覚も一緒か、と。
    それだけじゃない。車両、直通、容姿、名前ーそして、歴史。
    俺を構成するほぼ全てにアイツの存在がある。
    「ったく、ここまで縛っといてまだ足りねぇのかよ。強欲ジジィが」
    ー頼まれたって離れてやんねぇっつの。
    そう呟けば、首の朱色が熱くなった気がした。
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