逢魔時に影二つ 聞き慣れたアナウンスと共に、一人ホームへ降り立つ。生暖かい風を感じながら空を見上げれば、もう薄暗い。青年は静かになったホームを歩く。そして、何の気なしに視線を落とした、その時。
「……え?」
そこには目を疑いたくなる光景が広がっている。目の前を歩く男の影が、不自然に分かれたのだ。その分かれた影は独立して動き、親しげに男の肩を抱いている。まるで何かを話すように。錯覚かと思い目を擦るも、眼前の情報は変わらないままだ。青年はサッと血の気が引く。
「はぁ?!影が……」
「へぇ、珍しーな」
思わず青年が上げてしまった声に、くるりと振り向いた男ー内房線は、均一に口角を上げる。いつになく穏やかなそれは、無機質にさえ感じる不気味なもので。
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