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    trifle_trifle_

    @trifle_trifle_

    @trifle_trifle_の落書き箱です。

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    逢魔時に影二つ
    ちぼと話すモブの話。ちょいホラー。
    人外感のある感じが書きたくて。

    逢魔時に影二つ 聞き慣れたアナウンスと共に、一人ホームへ降り立つ。生暖かい風を感じながら空を見上げれば、もう薄暗い。青年は静かになったホームを歩く。そして、何の気なしに視線を落とした、その時。
    「……え?」
    そこには目を疑いたくなる光景が広がっている。目の前を歩く男の影が、不自然に分かれたのだ。その分かれた影は独立して動き、親しげに男の肩を抱いている。まるで何かを話すように。錯覚かと思い目を擦るも、眼前の情報は変わらないままだ。青年はサッと血の気が引く。
    「はぁ?!影が……」
    「へぇ、珍しーな」
    思わず青年が上げてしまった声に、くるりと振り向いた男ー内房線は、均一に口角を上げる。いつになく穏やかなそれは、無機質にさえ感じる不気味なもので。
    「え」
    「『俺ら』が見える人間なんて久しぶりに見たぜ」
    「俺ら?」
    「「そうそう」」
    僅かに声がブレていく。口は確かに一つなのに、その声は二つに聞こえた。
    「ヒッ!」
    まるで怪異か何かを見るように、青年は明らかに怯えて後ずさる。
    「……出てくんな。見えてんだからよ。怖がらせんなや」
    ため息をつき、何者かに向かって内房線が苦言を呈せば、するりと二つの影が一つになった。
    「どういう、こと……?」
    狼狽える青年に対し、内房線は頭をガシガシとかき、少し申し訳なさそうに口を開く。
    「あー、悪りぃな。俺ら上でも下でも直通してっから、色々曖昧なんだわ」
    「……曖昧」
    俺ら、直通、曖昧。
    その言葉に、青年は「もう一人」の正体を知る。彼と蘇我・鴨川で接続する路線ー外房線だ、と。それと同時に、目の前にいるのは人ならざるものなどだと思い知った。
    「はは、人間的には気持ち悪りぃよな。でも、俺はアイツの一部だったから仕方ねぇんだわ」
    「一部?」
    「おう。気になったんなら、俺らの歴史についてググってみ?Wikiでも調べりゃ出てくるからさ」
    「……」
    「怖がらせて悪かったなぁ、じゃまた」
    苦笑しつつ、踵を返して内房線は去っていく。その姿が階段から消えたあたりで、再度二つの声が聞こえてきた。
    「珍しい人間もいるもんだなぁ」
    「ったく、ガキを怖がらせんなよ!トラウマになったらどうすんだ!!」
    「悪りぃ悪りぃ!新鮮なリアクションだったもんで、つい」
    その会話に青年は確信する。やはり先程の「彼」は「彼ら」だったのだと。青年がくだんの件について調べれば、スマートフォンは彼らの歴史を表示した。見た目も口調も若い男性の様だが、その実は100歳を越えており、かつては「房総線」として一つの路線であったらしい。それが彼が言っていた「アイツの一部だった」の答えだろう。青年はスマホを閉じ、ポツリとつぶやいた。

    「やっぱ、俺達人間とは違うんだな」
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