おとぎ話をあなたに サンプル①月蝕と残り香
仕事に励む人々の活気ある声や奏でる工具の音を掻き消さんばかりの不安を孕む老若男女の声が、あちこちで飛び交っている。
大陸西部をほぼ横断した流星の目撃者は、当初想像していたよりも遥かに多かった。国内政治の影響か、流星は不吉の象徴だと捉える声も多い。
ここディベルも例外ではなかった。街の門をくぐってすぐの広場は、陽が真上に上がるよりも前にライタールへ出発したときと変わらず、流星の噂で持ち切りだった。
三歩先を歩いていたニーナが頭の上で手を組みながら、まだ門の近くにいるアベラルドとレティシアを振り返る。
「これからどうします? 腕……施療院に行くなら、私も一緒に行きましょうか?」
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