『君』と『私』の話。電車に揺られて、遠く遠く。
2人ぼっちで旅に出る。
どこか知らない綺麗な海まで。
『君』は『私』の手を引く。
2人で笑って話をする。
明日を夢見るまだ幼い子供みたいに、無邪気に、無垢に、あどけなく話をする。
薄っすら空が橙に染まり出す。
まるで豆電球みたいな太陽が真っ青な海を橙に染めていく。
『君』は言う。
「このまま2人でいなくなっちゃおっか」
なんて、逆光で見えづらい顔で穏やかに言う。
『私』は答える。
「『君』とならいいかも」
笑って答えたけど『君』の顔は見えなくって、でも繋いだ手を引かれるから歩き出す。
ちゃぷちゃぷとつま先で水を蹴って、ゆっくりと暖かい色の冷たい海を歩き出す。
「2人ならなんにも怖くないね」
「『君』とだから怖くないんだよ」
427