【五夏】とじる 家で食べる弁当はいつだってどうしようもなく孤独の味がする。
寮の部屋で食べるのも同じなのだな、と傑は小さく口を開けて米を運び入れた。
久しぶりに風邪をひいた。朝起きて、倦怠感によもやと思い体温計で熱を測ったら、平熱とは言い難い数値が示された。
子どもの時分は熱を出しやすかったが、まさか高校生にもなってまだ熱を出すとは思ってもおらず、完全に油断をしていた。
傑は季節の変わり目によく風邪をひく子どもだった。別に、特段傑の身体が弱い訳ではない。誰しもが心身の不調を訴える時期は否応なく呪霊の発生も増えるせいだ。
小さな頃は怯えていた。怯えるのに疲れて、体調を崩した。力の使い方が分かって、自分は弱い人たちを守るためにこの力を使わなければならないのだと思い始めてからは、目の前に呪霊がうろついていれば、例えそれが蠅頭だろうと野放しにできずに相手をした。
6879