ふゆとら今から帰ると電話で言われて、一虎はとりあえずベッドルームの暖房をつけた。それから風呂に湯を張り、電気ポットに水を入れてスイッチをオンにする。
「千冬が帰ってくる…!」
ペケJにブラシをかけて綺麗にしてやって、それからなんとなく自分の髪にもブラシをかけた。そわそわと落ち着かない。電車で30分、駅から8分。もうきっと帰ってくる。迷った末に結局、玄関に立って待つことにした。この家で一番最初に見るものは自分の顔であって欲しいなんて、妙な感傷。
マンションの外廊下を歩いてくる革靴の音。ガチャっと開いたドア。冷たい夜の空気が吹き込んでくる。
「あ、やっぱり!こら、ダメじゃないですか」
「ちふゆ」
「危ないでしょ、鍵ちゃんとかけ、な、いと…え、かずとら、くん?」
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