杉の木は意外と柔らかい……らしい。 本日は雲ひとつない快晴。太陽の光が降り注ぐ屋根には三毛猫があくびをしながら伸びをしている。柔らかな風が頬を撫で、遠くでちりん、ちりん、と鳴る涼やかな風鈴の音を運んでくる。
いつも通りの風景、いつも通りの日常……とはかけ離れた耳を劈くような泣き声が辺りに響いていた。
「うぇえん、お母さん……どこぉ?」
大きな瞳からぽたぽたと雫を流す少女。きょろきょろと辺りを見渡して母はどこかと探している。
少女の傍には白と黒の髪の毛と色の違う両の目が特徴の青年……桜遥が両手をまごつかせながら立っていた。
たまたま近くを散歩がてら見回りに来ていた桜。ふと耳に女の子の泣く声が届いたもので辺りを探してみると迷子の少女に出会ったのだ。
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