「ごめんね」とたった一言で三矢ユキを知ったのはオーディションの時だった。今まで産まれてからちやほやされた私と違って、ユキは普通の高校生であった。陸上部に入っているらしい。
帰り道、ユキと一緒になった。お互いの間に流れる沈黙。先に口を開いたのは、ユキだった。
「私、今日思った。二階堂さんならきっと合格するよ。」
「え?何いきなり?」
「二階堂さんにはカリスマ性もリーダーシップもある。私なんかじゃ到底敵わないよ。」
そう言ってユキは笑った。
「お腹空いたね。何か食べて帰ろっか。」
「…そうだね。」
近くのファミリーレストランに入って各々好きなものを注文する。相変わらず2人の間には沈黙が流れていた。ユキは頬杖をつきながら窓の外を見つめ、私はメニューに目を通していた。そして、聞いた。
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