最高の朝に「…………う」
風の音がしている。
中也が眼を開くと、淡い色彩をなびかせた夜明けの空が視界に広がった。
いつもより広いと感じる。胸のすくような晴れやかな広漠。寝起きのまなこには鮮烈に映る……のではなく、単純に、視界を遮る建造物が無いからだった。
瓦礫の山。
汚濁が暴れた結果だった。
記憶ははっきりしている。中也は横浜上空で龍の化物を圧倒し、太宰に一発呉れてやって、此処に着地した。
汚濁の後はどうしても体力回復が優先される。霧が晴れていることから、中也が眠っている間に事件は解決を見たようだった。
あの太宰の采配なのだから当然と云えば当然で、前座扱いが些か面白くないが、こうも的確に性格や行動パターンを読まれていると、むしろ清々しい。今日だけは、そういうことにしておいてやる。
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