テーブル席空いてても　テーブル席空いててもカウンター席
　
「こんにちは」
「いらっしゃいま——なんだ、イレブンか」
　ギィと音をたてて古びたドアを開けると、イレブンに真っ先に声をかけてくれたのはカミュだった。
「なんだとはなんだよ」
「いやぁ別に。ほら、水」
　店内を見渡すとイレブン以外に三組がテーブル席に着いていた。この店ではもはや見慣れた光景だけれど、全員が女性客だった。
　イレブンは当たり前のようにカウンター席の端っこを陣取って、メニュー表も見ずに座っている。この店のケーキはどれも美味しくて迷ってしまうから、曜日によって頼むメニューを変えているのだ。そのことはカミュも知っていて、以心伝心で注文が通る。
「カミュ、今日は何時上がり？」

幸せの居場所悔しいと思った。

悲しいと思った。

嬉しいと思った。

また悔しくて、また悲しくて、嬉しくて

そんなことを繰り返して

やっと終わった時

ボクには…何が残っているんだろう

～～～～～

幸せになりたい

ネルセンの試練の中で一番最後までとっておいた願い事。

一度は選んで見たけど、"誰が"と言われて選ぶのをやめてしまった。

誰が…誰と…

そんなの決まってはいる…決まってはいるんだ。

ボクが幸せになっても、良いのだろうか？

漠然とした不安だらけで、幸せなんて望んでいいんだろうか？

火の番をしながら星空を見上げると、綺麗な星空が視界に広がる。

「１人取り残されたみたいだ…」

ぽつりと呟く

「誰が１人だって？」

足音もなく近付いてきたカミュがボクの顔を覗き込む