てれほんのやつ「なぁ薫、今どっち向き?」
「っは、どっち……??」
「仰向けかうつ伏せか」
「ん、よこ……」
「何着てる?」
「スウェット……」
「下着は?」
「はいてるわけないだろボケ、っていうかお前何して……?」
「ん〜?イメージも大事なんだよ。続けて?」
「んっぅ、……おまえは?」
「ん?」
「こじろうは、なに、着てる?」
可愛すぎて一瞬鼓動が飛んだ。
まさかこちらにも聞き返されるとは。
俺が何を着てるかどうかが、今何か影響することがあるのだろうか?
「仕事終わりだから、シャツと普通の黒のスラックス。下着は〜あれ、黒に緑のライン入ってるやつな。」
「ふふ、へぇ、そ。」
わざわざスラックスの中を覗いて伝えてやると、吐息混じりに笑う声が耳をくすぐる。
「なぁ薫、俺が今何着てるかでムラムラしたりすんの?」
はぁ、はぁ、と何度か吐息を零すと、薫は少し考えた様子で答える。
「ん、いや、べつになんでもいいけど、仕事終わりなら、こじろのにおい、濃いだろうな、って、」
「……」
汗だくだからやめろっていうのに、筋トレやスケートの後にやたら引っ付きたがった薫を思い出す。
嫌がらせか悪戯だと思っていたけれど、ひょっとして、ただ薫が好きだからそうしていたのだろうか。
剥がしても剥がしても胸に背中にくっついては擦り寄っていたのが、単に薫の愛情表現だった可能性に思い当たると、今誰の重みも感じないことが途端に寂しく感じた。
今目の前に薫がいたなら、きっと向かい合って首筋に顔を埋めていたのだろう。