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    七海こいと

    彼と私の大切な思い出の保管庫
    所謂自己投影夢と言うものですが
    本気で彼に恋をして愛しています

    〝fgoの少年悪漢王〟
    彼に好意を抱いておられる方は
    お引き取りいただくことを推奨します

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    七海こいと

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    処女作
    ただひたすら、大好きだけの気持ちを込めた、ような気がする。

    片思いだったあなたへ 風はちょっと冷たいけれど、穏やかな夜だった。

     簡単な素材集めでのレイシフト。
    いつもの慣れたメンバーは、皆、手際良く目的を達成していた。
    直ぐに帰れるけれど、誰が言い出したのか、「たまの休息も必要!」と、のんびりしてから帰ろう、と満場一致で決まった。

     念の為、周囲の安全確認は済ませてから、薪に火を灯す。
    柔らかい光と、薪の燃えるにおい、ぱちぱちと火の弾ける音が、優しい静寂に響く。


    「ちょっと僕、散歩してくるよ」


     徐にビリーが立ち上がって、「すぐ戻るから」と言い残し、周囲の返答も待たず歩き出す。
    その背をぼんやり眺めて見送ったあと、ふと、今がチャンスなのではないか、と思ってしまった。


     私はビリーが好きだ。
    多分自分で思っているより、ずっと。
    なんなら、独り占めしてしまいたいと思うくらい。

     でも、私はカルデアのマスターで、我欲で動いていい立場ではない。
    今や大勢のサーヴァントを率いているし、行動一つ一つに責任を伴う。
    このような状況下にも関わらず、一人浮ついた感情を持っているようで、外に出してはいけないものだと、ずっと胸の内に抱えてきた。
    いっそ、この気持ちが、泡のように消えてくれればいいとさえ思った。

     だけど、結局その感情は消えるどころか、膨れ上がるばかりで、留まるところを知らなかった。
    心の許容量があるとするならば、既に限界に達していたのかもしれない。
    ダメかもしれない、そう思わなかったと言えば、嘘になる。
    けれど、その恐怖を跳ね除けてしまうくらい、好きの気持ちは膨らんでいた。

     膨れ上がった感情が、刹那、弾けたのがわかった気がした。

     その衝撃に突き動かされるように、気付けば立ち上がっていた私は、「私も行ってくる」と小さく発して、小走りで駆け出していた。

     「私もお供します」と言いかけたマシュの言葉が、途切れたのを背中で聞いた。
    ロビンが制止したのだろう。
    きっと、私が駆け出した理由を、分かっていたのだと思う。



     ビリーは拍子抜けするほど、すぐに見つかった。
    手頃な岩に腰掛けている、見慣れた背中が見えた。
    空を見ているらしい。
    声を掛けようか悩んでいると、くるっとこちらに振り返って、「やっぱり、マスターだ」と柔らかく微笑んだ。

    「流石。すぐバレちゃった」
    「バレバレだよ。そもそも君、気配隠す気だったのかい?」
    いつも通りの軽い口調でクスクス笑う。

    「隣いい?」
    「もちろん、どうぞ」

     私がわざわざ、一人のときを狙ってここに来た理由を判っていて、いつもの調子のままなのか、はたまた本当に全く気付いてないのか…。
    察しのいい君の事だ、恐らく前者だろう。
    だって、「どうしたの?」等と、ここに来た理由を聞かないのだから。
    そう思って、少し憎らしい気分になる。

     とはいえ、想いを告げようと勢いのまま来たものの、いざその時になると決心がつかず、緊張でろくに思考が働かない。元々緊張に弱い私なので尚更だ。

    「星が、綺麗なんだ」

     ぐるぐる必死に思考を働かせている私に、君が掛けた一言。
    その言葉に、思わず空を見上げた。

     ああ、なるほど、確かにそこには満天の星空が広がっていた。
    どうして気づかなかったんだろう、と思うほど、眩いばかりの星空に、思わず感嘆の声が漏れた。

    「僕、別に星が特別好きってわけじゃないんだけど、星の綺麗な夜空の日は、一層静寂が映える気がして好きなんだ」
    「ビリーくん、静かなの好きだもんね」

    「私が来て、一人じゃなくなっちゃったけど、迷惑じゃなかったかな」
     一抹の不安を口にしたけれど、「迷惑だと思ってたら、最初から一人にしてくれって言うよ」と尤もな理由で返される。

    「レイシフト空間の星空だから、本物の星の光ではないけど、それでも綺麗なものは綺麗だよね」

     そう言うと、君は一瞬だけなんとも言えない、感情の読めない表情をして、直ぐに顔を綻ばせた。
    この時、その真意はわからなかったけど、私の思ったままの一言を、好意的に思ってくれたのは、その表情から分かった。

     会話をそっと飲み込むように、また訪れる静寂。
    少しの会話で緩んだ緊張が、また増していく。顔が熱い。
    自分の心音が、酷く五月蝿くなっていく。

     何も考えられなくなる前に、言ってしまわなければ。

     逸る気持ちより、なお早く先に口に出ていた「好き」の二文字。
    聞こえたかな、そもそも私、ちゃんと言えた?そう思って、恐る恐る君の顔を見てみる。

     ああ、その顔はちゃんと聞こえたんだ、そうわかる表情をしていた。
    今まで見た事のない、間の抜けた顔をする君。
    そんな顔もするんだ、と新たな一面に嬉しくなる反面、ちょっと面白くなってしまう。

    「好き?マスターが僕の事を?本当に?」

     君の言葉で、自分が遂に告白をしたのだと言う現実が、一気に押し寄せてくる。
    思い出したように早鐘を打つ心臓のせいで、呼吸が浅くなる。

    「こんな嘘、つかないよ」

    精一杯の返答、そもそも告白されておいて聞き返さないで欲しい。

    「そっか………うん、ならもう降参だ、僕も白状するよ。君がずっと好きだった」
    多分、君が僕を好きになるずっと前からね、と笑いながら付け足す。


     私は今、夢を見ているんだろうか?
    世界には、こんなに甘くて優しい言葉の響きがあるんだ、と、止まってしまいそうな思考の中、初めて知った。

    「ずっと僕だけのものにするのは無理だって思ってたけど、これからはそうじゃないって思ってもいいんだね?」

     その問いに、頷くしか出来ない今の私とは対照的に、君はどうしてそう用意したかのように、スラスラと言葉を紡げるんだろう。
     満足に言葉を返せない私に、私の欲しい言葉ばかり貰って、気持ちだけじゃなく、体まで浮いてしまいそうだった。


     「顔が真っ赤だよ」と、私の顔を覗き込みながら、君は悪戯っぽく笑っている。
    それに、「誰のせいなの?」と返す私。
    君の綺麗なブルーグレーの瞳に映っている私は、なんだかとても情けない顔をしている。

     いつもと変わらない口調。
    でも、二人の距離が近くなっていたことが、その関係の変化を証明していた。



     「そろそろ戻ろう、心配掛けてるかも」そう言いながら、右手を差し出す君。
    自然に手を繋ごうとしている。
    恥ずかしいけれど、私の左手はそれに応える。
    初めて触れる君の手は、思っていたよりずっと男の人の手だった。

    「こんなの戻ったら直ぐにバレるよ…」
    「寧ろ僕は直ぐにバレないと困る」

     そんな、お互いの想いを通わせて数分で、バカップルのような会話をしながら、手を繋いで短い帰路に着く。

     行きに感じた冷たい風が、今はなんだか心地良い。

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