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     手が届くと気づいてしまったのはあの日だった。
     重ねた手をシーツに縫い付ける。だけでは飽き足らず、ふたりの重ねた手に楔が打たれることすら妄想していた。
     お前をこの地に繋ぎとめたいと。
     湿った髪に顔を埋める。陽の匂いがする。脱力した体を背後から抱え込む。ひくりと少しだけ動く。反射だったのかもしれないが。
     寝ているかと思ったが、目は開いていた。凪いだ湖面のようだった。
    「おれさ、最近やっと気づいたんだけど」
     ぽつぽつと、言葉を紡ぐ。
    「ダイはさ、おれが諦めてたからおれを落としたんだ」
    「あのときおれは、ダイと一緒に死んじまう覚悟を決めてたからさ」
     吐息が震えた。いつの間にか力が入っていた腕の中で、薄い腹が身じろぎした。
    「そんなんじゃ、そりゃ、だめなんだ。そんな覚悟なんかさ、決めちゃいけなかった」
     希望が見えなくなった自分に、ダイはまだ希望を見出していたのだと。
     死にに行くのは違うと。生きて、ほしいと。
     震える息を吸い込む音がする。
    「おれはちょっと、自分の命の事、簡単に考えすぎてたんだな」
    「それをさ、友達一人失って気付くんだからさ、やっぱバカなんだよなおれ」
     今度こそ強く掻き抱く。苦笑する音が伝わってきた。
    「だからさ、おれは、おれを認めなきゃな。一人じゃさ、難しかったかも、しれねえけど」
    「おまえも……居てくれるし」
     だから、大丈夫。
     抱き締めた手に掌を重ねてくる。温かかった。これが、命だ。ここにある、命が。オレの腕の中に。そうすることを、選んでくれたのならば。
     これは傲慢な考えだったが、
     例えばオレが、もっと早くにお前を繋ぎとめていれば、運命は違っていたのだろうか。



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    recommended works

    toma_d2hp

    DONEヲタヒュンとポップ【再録】
    時は21世紀になって数年後、秋葉原は趣都と呼ばれヲタク文化が爛熟していた…なぎささんの作品のヲタヒュンが大好きすぎて設定をお借りしたお話。似て非なる世界線と思っていただければ幸いです。なぎささんの素敵なマンガは下記にて…!!
    ■現代日本でオタクやってたら即売会でコスの売り子に一目惚れした話
    https://www.pixiv.net/artworks/89088570
    Wonder2 爽やかな風が、コンコースを吹き抜ける。
     JR秋葉原駅中央口改札前。
     天井が高く開放感がある上、改札の前の壁沿いに立てば、待ち合わせに最適だ。
     聖地巡礼者、外国人観光客、予備校生、チラシを配るメイド、普通に家族連れなど、さまざまな人種の坩堝と化した電気街口ではなく、こちらを待ち合わせ場所に選んだ自分勝ち組…多分。
     五月半ばの日曜日、気温、湿度とも申し分ないはずだったが、ポップとの待ち合わせ時刻が近づくにつれて、俺はだらだらと変な汗が背中を流れるのを感じていた。
     まずい。緊張してきた…。
      これ以上、改札方向を見続けることなどできはしない!
      落ち着け、とりあえず、かわいいもののことでも考えよう。オリゼーとか、猫とか…。あ、少しなごんできた。
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