はじめまして、もしも悦びに湧く周囲を見渡して、灯城は、なるほど、自分が生き返ったのだと理解したつもりだったのだけれど。探していた知った顔に出会った循環、その確信は微妙に揺らいでしまった。何しろ、見つけた相手は、最期に見た時とほぼ同じ顔をしていたので。
「ひ、火縄……?」
はじめまして、もしも
かっぴらいた瞳孔の前で二度三度手を往復させてみる。どうしようか、と思っていた時、彼の後ろから現れた男に声をかけられた。
「灯城さん、ですよね?」
はい、と頷けば彼は弾かれたように笑顔になる。
「どうも、秋樽桜備です」
固い握手をしてくれた彼は今の火縄の上司で、火縄は第八特殊消防隊の中隊長なのだという。わかりやすい説明に頷いて、つい火縄の肩を叩いてしまう。
「すごい、出世したな」
けれど、火縄は相変わらず幽霊でも見ているかのような—それはそうかもしれないが—顔のままで。多分キャパオーバーしてるんだと思う、と桜備が苦笑する。
「俺もさっき生き返ったんだけど、その時もこんな顔してたから」
なるほど、と言ってはいけないような内容を言われているのに、思わずなるほど、と頷きそうになったのだけれど。
「キャ」
変な音を火縄が立てたので、反射的にそちらを見た。桜備も自分と同じくらいの速度で彼を見下ろす。2人分の視線に耐え切れなくなったように火縄が俯いた。
「キャパオーバーくらい、しますよ……」
消え入るような声に、やばい、と思った瞬間。「あ、大隊長が泣かせた!」
「え、俺のせい!?」
大きな声を上げた子供は、おそらく火縄の部下なのだろう。わらわらと集まってくる数人を、まるで本当の子供のように宥めている上司だという男。彼の周りで繰り広げられる光景に、じわじわと口許が緩んでしまって。
「良かったね、火縄中隊長」
それでも、うるさい、と返しながら肩を叩いてきた強さは覚えている通りだったから、灯城は笑ってしまった。