運命の赤い糸③【森本 ーgreenー】
赤い糸が繋がる先に向かうと、いつも通い慣れた道場の奥へと続いていた。
さすがに朝が早く、建物の中に誰もいないのではないかと思っていたけれど、その糸が示した場所で森本が一人熱心に自主練習していた。
そしてここまで案内をしてくれた糸はというと、確かに森本の小指にへと結ばれているのが分かった。
「…っふ、……っ!」
真剣に取り組んでいるところに水を差すことが出来ず、しばらくの間森本の練習を眺める。
竹刀が空気を切る音、短く息をして真っすぐに前を見据えるところみれば、恐らくこの糸が見えているのは俺だけらしい。数分ほど経ったあと、背後から人の気配を感じたのか森本が不意にこちらを振り向く。
「おはよう、丈士」
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