引っ越してきて数度目の夏休み。住み慣れてきた町の、いつも行かない場所に行ってみようと思い立った。
確か山の方に、入れそうな林があったはずだ。
少し散策してみようと足を踏み入れた。
林は頻繁に人が立ち入るようで、踏み固められた道を歩いて行く。しばらくすると、小さな池に出た。
「わぁ…良いところだ~!」
自然の中にいると、何かパワーが湧いてくる気がする。
透き通った水面に見とれていると、ふいに後ろから話しかけられた。
「おい、そこでなにやってんの」
まだ声変わりの終わっていない少年の声。振り向くと、子供が木の陰に立っていた。線の細さと整った顔立ち、そして肩まで伸びた淡いミルクティー色の髪のせいか、中性的な印象を受ける。
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