最期のごちそう沈む夕陽は、ゆらめく火のように海面を輝せ、目を灼く。
せり出した崖、錆びついた看板が危険を呼びかける、柵を越えた草原、一寸先は遠く広い海。
「死ぬ時は道連れにしてやるよ。」
軽やかにふらつく足取りは今にも風に攫われそうだ
「好きだろ?俺のこと」
穏やかな笑顔は一層美しい。
「最後の晩餐……じゃねえけど、死ぬ時にきれいな顔拝みながら死ねるの、良いと思うな〜俺」
風に煽られた髪が西谷の顔を隠す。
「今まではさ、俺の顔見て死ぬやつって大抵苦しそうな顔してて、俺ってそう言う時大体笑っちゃってんだよ」
口元にまとわりつく髪の毛を払う。
「アンタが嫌いな顔」
ニタ、と下品な顔で笑う。
「でも、アンタが好きな顔なら、多分、みんな欲しがる顔なんだろうな」
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