「こうやって伝えたら?(仮)」下書きの一部公開(終戦後、ヒュンケルはパプニカでエイミの看病の元回復に努めている。
彼の元には連日仲間たちが見舞いに訪れる。ある夜のこと……)
歯磨きやトイレの介助を手伝い、寝床を整え、ヒュンケルくんをベッドに寝かせるエイミちゃん。
いつものように、おやすみを伝えて部屋を出て行こうとしたとき…
「エイミ、オレには好きな人がいるんだ」
なんの前触れもなく、突然ヒュンケルくんは言いました。
「その…オレは今まで誰かをこんな風に好きになったことがなくて…どうやって気持ちを伝えたら良いのかと…」
「…相手は誰なの…?」
相手が誰なのかによって伝え方は変わってきます。
「その人は、毎朝一番に会う……」
毎朝一番にヒュンケルくんに会いに来る存在、それは、毎日ヒュンケルくんの朝食の時間にやって来て、持参した朝食を一緒に食べているラーハルトくんに違いありません。
「そう……」
少し考えてから静かに部屋を出て行くエイミちゃん。
暫くして園芸用の鋏と水の入ったグラスを持って戻って来ました。
「エイミ?」
エイミちゃんは花瓶のバラを一本抜き取りました。棘はあらかじめ取ってあります。
ハンカチを敷くと、バラの枝を短く切り落とし、ヒュンケルくんに差し出します。
「明日その人がこの部屋に入ってきたら、このバラの花を渡して気持ちを伝えなさい」
「……」
静かに受け取る
「分かった。ありがとう」
「そのままだと萎びてしまうから、これに挿しておくと良いわ」
そう言って水の入ったコップを差し出しました。
ヒュンケルくんはそれにバラを挿すと、脇の棚に置きました。
(ああそうか、やっぱりラーハルトさんなんだ)